観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

第二次脱出計画(1988)かんべむさし

 徳間書店が月刊誌として発行していたSFアドベンチャーで連載していた半自伝的小説。

主人公はペンネーム「なんのぼうし」。大学で広告研究会に入り、広告業界に入りたい入りたいと学生時代から念じ続けており、なんとか入れる広告代理店に就職したのだが、どうやら自分が思い描いていた世界ではなさそうなことに徐々に気づく。

その後自分がやりたいことをやらせてもらえる場所を求めて転職するのだが、そこではそりの合わない上司と出会ってしまい、また苦汁を舐めることになるが、たまたま趣味で書いていたSF小説が賞を取り、小説家「なんのぼうし」として会社を辞め、独立し文章で食べていくことになった。

しばらくは調子よく小説を書いていたのだが、今度はこの世界でも、なにやら自分の常識が通用しない人たちが周りを取り巻いており、徐々にその包囲網が狭まっていることに気づくのだった・・・。

この小説はおおよそ「広告代理店のサラリーマン時代」と「小説家の時代」に分かれており、それぞれの世界から「脱出」を行った経緯が書かれている。

第一次脱出はもちろんサラリーマンから小説家への転身なわけだが、第二次脱出とは何なのか、というのがストーリーの主軸。

今この年齢になってから読み返すと、第一次脱出については正直サラリーマンだったらそれくらいの「思い通りにいかない」経験は当たり前だろうと思ってしまうのだが、そこはそれ、あきらめの悪い作者のほぼ実体験が「小説」という体を取って表現されているのだった。

第二次脱出は有体に言ってしまうと、小説家になってから周りに表れてきた非常識な人たちの接触からどうやって身を守るか、ということなのだけど、今だったらネットで打ち合わせも原稿送付も住んでしまうから、当時の時代ならではの悩みだったのかもしれない。

この作者は一応SF作家としてデビューしてはいるが、作風はあまりSFよりではないというか、自由な発想という意味で何でも書けるSFというジャンルを利用している感じの人で、本作もSF味は一切ないのになぜかSF雑誌で連載。まあでも連載当時はこの雑誌を毎月買っていたので楽しく読んでいたのを思い出すなぁ。

第二次脱出計画 (徳間文庫)

第二次脱出計画 (徳間文庫)