平凡パンチに連載されていた、漫画家とり・みきのコミックエッセイ。
ミキヲちゃんというキャラクター(ほぼ本人)が主人公で、相方としてタキタくんというおっさんが登場するが、それは近所の書店BOOKSオリーブの店員田北監生という男で実在のとり・みきの友人である。
かれらが街を放浪しながら不思議なものを探していくという体裁で、ちょっと変わったものを取り上げるという漫画エッセイになっている。
最初の方は、目黒区にある寄生虫博物館に行ったり、そこで見かけた小学生たちに流行りのアイドルを聞いたり、仲間内の温泉旅行に行ったりととりとめもない話が多かったのだが、2つの大きな流れがこのコミックにやってくる。
そのうちの一つは「痛い話」。
話として相手に痛さが共感として伝わる内容であることと、マジもんの闘病とかはダメ、という縛りで一般視聴者に募集し、すごいのがいろいろと集まってきていた。
ぜひここで紹介したいのがあるのだが、やっぱりルール違反だよな・・・
もう一つが「オジギビト」である。
オジギビトとは、工事現場によく掲げられている鉄製の看板に、ヘルメットをかぶったおじさんやお兄さんが「ご迷惑をおかけしております」とお辞儀をしている絵を見かけたことがあると思うがそのアレだ。
これをとり・みきは「お辞儀している人=オジギビト」と名付け、収集家となったのであった。
実はあれも一度注目してあちこちで見てしまうと、さまざまな種類がありつつ、明らかに系統発生しておりいくつかのタイプに区分される。
お辞儀をしているタイプの他に、通ってはいけません、と両手を広げる弁慶型、手のひらをこちらに突き出して「いけない!」と見え切り型などがあり、その世界も奥が深い。
そしてこれが縁で、以前紹介した赤瀬川源平たちが進めているトマソン等の同好の士が集まり、「路上観察学会」を設立されていたが、この会員に勧誘され、入会するのだった。
学会ではトマソンとオジギビトの他にも、ハリガミ考現学の人、建築探偵の人、江戸文化風俗の研究の人、東京女子高生制服図鑑を作った人など、バラエティに富んだ、でも本流ではないサブカルチャーとしての興味対象を学問に突き詰めたそうそうたるメンバーがそろった。
学士会館で決起集会が開かれたが、すでにこの会が真面目な学問のものではないことが学士会館側にも漏れ、写真撮影の時は「学士会館」が入らないようにしろなどと、いちゃもんを付けられたほどであったとか。
この、ある出来事に対するとらえ方というのが人によってだいぶ違い、ある人にとっては単なる町の風景に溶け込んで意識すらしない対象なのが、ある人にとっては非常に面白く興味が出てきて事例を集めたくなってしまうものであるというのが、この漫画を通じて高校生時代の僕は学んだので、自由な視点を持つという意味ではありがたい漫画であった。
ただ、おかげで本流ではなく常にちょっとおかしなことととか変なことを率先して注目するようになってしまったのだが、当時はVOW(おかしな看板やトマソン的なものの写真を募集して掲載する、宝島のムック本)がすごく流行っていたので、時流としてああいうものがもてはやされていたのも事実。まあ、しょせんは僕もつまらんマジョリティだったということなのかな。