タイトルは聞いていたのだが、どんな映画か全く知らなかったので観てみた。
未来っぽい街(ロンドンらしい)。非行少年アレックスは、不良グループを率いて、別のグループとのケンカや強盗、レイプなどの犯罪をレジャーのように楽しむ毎日を送っていたが、仲間の裏切りに会い、逮捕され、14年の実刑を受けることになる。
投獄されたアレックスは模範囚として過ごしていたが、ある精神療法を受けることで善良な人間になれ、すぐに出所できることを知り、その実験台に志願した。
囚人のコストを減らすことを第一に考えている政府の肝いりもあり、大々的にマスコミへその効用と実績を説くための広告塔になったアレックスは世間の注目を浴びる中、出所したのだった。
しかし、家に帰っても両親からは歓迎されず、昔の被害者やグループの元仲間にリンチされ、這う這うの体で逃げたのはやはり昔強盗・レイプを行った家だった・・・
サイケデリックなデザイン、クラシックを多用しながらも音はシンセサイザーで崩してポップさを演出した音楽、俳優たちの表情を極限まで表現した演技など、いろいろとぶっ飛んでいるのは確か。
暴力・性暴力がすごく楽しいものなのではないかと思わされてしまう倒錯感がエグい。
洗脳を受けた主人公はそういう暴力・性暴力、そして一緒にBGMとして聴いてしまったベートーヴェンの第九を見たり聞いたりすると強烈な吐き気を覚えるという洗脳を受けてしまうのだが、我々観ている側も、そういうのがすごく楽しそうなのに常識では引いてしまうその差分に「吐き気」を感じてしまう、その感覚を味わうための映画ということだろう。
個人的には少々気持ち悪かったが、まあでも表現としてはわからなくもない、という感じ。
「時計じかけのオレンジが好きだというとかっこいいという風潮!」みたいなことを芸人さんが仰ったりしているが、もうさすがにそんな時代じゃないよなぁ。
ちなみにどうしてもわからなかったのでググってしまったが、「時計じかけのオレンジ」とは、ロンドンの労働者階級が使っているスラングが元になっているらしい。見た目は普通だが、中身が変だという表現で、「時計じかけのオレンジのように奇妙な~」という言い回しがあるとのこと。なるほどねぇ。