観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

劇場版 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編(1982)

 いよいよガンダム劇場版も第三作。大詰めである。

ジャブローから宇宙(そら)に上がったホワイトベースがテキサスコロニーやサイド6に寄りつつ、ジオンの要塞ソロモン、そして最終決戦地ア・バオア・クーでのジオンと地球連邦の総力戦を描く。

この時代ではスペースコロニーが数多く作られ、地球からの移民によって維持されていたが、もともと移民=貧しい人々、地球=富裕層という構図があり、宇宙移民たちは地球からの差別を受けていた。
地球から見て最も辺境に位置したサイド3(コロニーの集合体を「サイド」と呼び、番号が振られている)がジオン公国を名乗り、地球連邦の圧政に対する独立を宣言したところからこの戦争が始まっている。
ジオンによる地球への「コロニー落とし」という禁断の戦法により、地球では23億人が死んでいき、オーストラリア大陸の16%が消失するなどの甚大な被害が生じたことから、お互い徹底抗戦の道を歩んでいった。
その「スペースコロニー」が本作の主要テーマになっており、廃棄されたコロニー、ジオンと連邦に対して中立を宣言しているサイド、そして小惑星を改造した要塞と、宇宙に浮かぶ人造建造物を巡る旅でもあり、見所の一つとなっている。
が、本作で最も語られているのはアムロやシャアのニュータイプとしての覚醒であり、ララァというニュータイプの少女とアムロの出会い・別れである。
ニュータイプという考え方は活動家ジオン・ズム・ダイクンにより提唱されたが、実は物語の中で明確に概念として提示されておらず、全員が憶測で語っているという不思議な構図になっている。
ジオン公国を独裁しているザビ家は宇宙移民こそがニュータイプとして覚醒するという選民思想に利用し、軍隊ではモビルスーツに乗る上での勘の良さや反射神経や予知能力などの具体的な能力について触れられている。
ジオンからも連邦からも、最初のニュータイプはおそらくアムロ(ジオンからすると「白いモビルスーツパイロット」)であろうと目されているが、当のアムロですら、自分がニュータイプなのか、ニュータイプとは何なのか、おぼろげにしかわかっていなかった。
ただ、戦いの中でのララァとの邂逅、そして精神同士の意思疎通により、よりわかりあえるのがニュータイプではないか、とも言っている。
これを観ていた、実社会では日陰者であったオタクたちは、我々こそがニュータイプ(虐げられているが隠された能力を持つヒーロー)であると声高らかに宣言したわけだが、こういう見方は昔からSF世界では繰り返されており、古くはミュータント小説である「スラン」が上梓された際も「我々はスランだ!」的な発言があったりした。
ニュータイプが初めて戦争に投入されたのはララァではなく、テレビ版でちょっとだけ登場した、ジオンのシャリア・ブルが搭乗するブラウ・ブロで、有線式の砲がサイコミュ(サイコ・コミュニケーター=脳波コントロールシステム)で独立駆動するモビルアーマーだったが、劇場版ではララァエルメスが初めて。無線式のビットと呼ばれる砲が独立して動き、戦艦やモビルスーツを次々と撃破して目覚ましい戦功を上げたが、アムロガンダムに倒された。
シャアもニュータイプと目されてはいるが、最後のア・バオア・クーで初めてニュータイプ専用機・ジオングに乗ることになる。しかしなんでジオング?変な名前だなぁ。士気高揚のためのネーミングらしいが、その割にはあっという間にガンダムに倒されてしまった。
シャアと言えばジオンの忘れ形見なわけだが、その妹である連邦側のパイロット、セイラ・マスとシャアがテキサスコロニーで出会い、でも分かり合えずに別れ、シャアがセイラに「軍をやめろ」とコロニーの出口に金塊を浮かべておくシーンがあり、セイラは事情を聴取したブライトに「ホワイトベースのみんなで分けてください」というのだが、もったいない!もらっとけ!と当時は強く思ったものだ。
その他にも、スレッガーとミライのコイバナ、ミライと元婚約者カムランのあれこれ、アムロの父テム・レイの残念な酸素欠乏症、ソロモンを守るドズル・ザビの怨念こもった最後、ギレン・ザビと父デギン公王の確執、ギレン・ザビキシリア・ザビの兄弟げんかなどなど、エピソードてんこ盛りなのだが割愛。

ラストではア・バオア・クーに取りつくことに成功したガンダムアムロが、ジオングと激闘を繰り広げ、ガンダムの頭と左腕をやられた末、オートパイロットでジオングを攻撃させて自らはシャアとの白兵戦に挑む。
うわぁガンダムもったいない!こんなあっさりおとりに使ってボロボロになってしまうとは、ガンダムかわいそう!と小学生当時は思ったものだが、ガンダムはプロトタイプで代わりがないので、やはり相当もったいないことには変わりない。結構大事に大事に乗ってたはずなのだが、最後だけやたら潔いというか諦めがよいというか。
そしてシャアとアムロのフェンシングでの戦い。ヒキオタなアムロ陽キャのシャアでは、どう考えてもアムロに勝ち目はないはずなのだが、互角以上に戦えてしまうのもニュータイプであるが故、ということらしい。いやいや、運動神経はそうはいかないだろう、というのは素人の浅はかさであろうか。
そしてここでセイラも二人に出会うのだが、これってアムロとセイラがくっつくってこと?と誰もが思った。
しかし、最後シャアとの戦いで負傷し、意識がもうろうとなりつつ、ニュータイプとしてテレパシーでホワイトベースの皆に話しかけるシーンで、「僕の好きなフラウ」と言っているので、やっぱりフラウ・ボウか?
その疑問は、後世の「機動戦士Zガンダム」であっさりハヤト・コバヤシと結婚しているフラウを見て裏切られることになるのだが、それはまた別の話。
アムロホワイトベースの仲間の元へ帰ることができ、シャアはキシリアをバズーカで殺してザビ家への復讐を完遂し、連邦とジオンは停戦協定を結ぶという大団円となる。よかったよかった。
この話がのちに、先の「Zガンダム」そして「機動戦士ガンダムZZ」、「逆襲のシャア」「ユニコーンガンダム」へとつながっていくわけで、通称宇宙世紀と呼ばれるシリーズになるのだが、やっぱり一番それっぽくてかっこいいやね。

劇場版 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編

劇場版 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video