「狼の紋章」「狼の怨歌」「狼のレクイエム 第一部」から続く第四弾。
内調のエージェントとして暗躍する西城恵と沢恵子、インディアンのチーフスン。彼らはドランケの後釜となるCIA極東センターの新センター長であるハンター宅を襲い、不死鳥作戦についての情報を得、そこで人質として娘のエリーを拉致する。
一方虎4と犬神明はCIA極東センターへトンネルを採掘して潜入に成功するが、そこで出会ったセンター長・ハンターとの会話で、青鹿晶子を救うための麻薬解毒剤は存在しないという事実を告げられる。
そして、この要塞から逃れる方法がないことも・・・二人は決死の脱出行を試みるのだが・・
ここまでの4作のストーリーの中で一番盛り上がるのが本作だが、あまりにもネタバレになりすぎるので詳細は省略。
ここで西城が「狼の怨歌」で打った犬神明の血清の効果がほぼなくなってしまい、かわりに残っていた血清を瀕死の沢恵子に打ったことで彼女の方が不死身性を一時的にではあるが獲得してしまうという、なんとも非情な殺し屋にあるまじき行為を行ってしまうのだが、この殺し屋・西城にとても人気があるのはこういう人間味のあるところがポロポロ出てくるからなのだろう。
そして青鹿晶子があまりにも不憫すぎる境遇でかわいそうすぎる。まともに行動していたのは「狼の紋章」までで、そのあとは羽黒獰にいいようにされ、そこからCIAに拉致されてセンター長のドランケにももてあそばれ、麻薬漬けにされて妊娠までさせられるという、今だったらクレームの一つでも来そうなストーリーである。平井和正の作品はこういうの多いんだよな~。
平井曰く、「ハッピーエンドは物語を殺す」とのことで、この第二部もラストはかなり厳しい終わり方をするのだが、後年ファン向けに発行された「ウルフランド」というエッセイや事故パロディを集めた本の中で、「狼のレクイエム第二部がハッピーエンドだったら?」という設定でラストを書き直したものを出している。たしかに、その終わり方だと印象が薄いというか話が完全にそれで終わってしまい余韻がなくなってしまい、なるほどなあと中学生ながらに思ったのを覚えている。
そしてこの後は「黄金の少女」(狼のレクイエム第三部)、「犬神明」と続いていく。