観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

機動警察パトレイバー(コミック)(1988)ゆうきまさみ

 80年代から90年代にかけて、OVA・漫画・アニメ・映画など様々なメディアでリリースされるメディアミックスの先駆けとして知られるコンテンツ。
ここではまずコミック版について取り上げる。
もともとはゆうきまさみをはじめとするクリエイター(というかオタク)集団でプロットを考えた持ち込み企画。パトレイバーとしてまとまった段階でこの集団に「ヘッドギア」という名前が付けられたため、原作はヘッドギアということになる。
先にOVAがリリースされ、のちにゆうきまさみによりコミックがリリースされた。
ストーリーの設定としては、近未来の199X年(80年代から見た近未来)。工事現場や軍隊など、ハードな環境での人手の代わりとして開発されたロボット、汎用多足歩行型作業機械(通称レイバー)が発達した。東京では東京湾埋め立て工事(バビロンプロジェクト)のため大量のレイバーが稼働していたが、同時にレイバーによる犯罪も増加の一途をたどる。
警視庁は特科車両二課中隊(特車二課)を設立し、パトロールレイバー=パトレイバーを生み出した。
本作は特車二課に若者たちが配属され、試行錯誤しながら人間関係を構築し、レイバーの扱いに体当たりで慣れていく様子と、レイバーを取り巻く企業や官公庁の思惑が交錯したストーリーが綴られている。
パトレイバーはいかにもかっこいいロボットな感じで当然人型なのだが、この世界では人型である方が珍しく、たいていは用途に特化した形をしていてバラエティに富んでいる。
また、警察がパトレイバーを動かす際には、レイバーを運ぶトレーラーを運転する担当、レイバーのパイロットであるフォワード、そしてパイロットに指示を出すバックアップ担当が一組になっている。
特にフォワードとバックアップは一心同体と言われるほどバディ感が強いのがユニークと言える。
たいていのロボットアニメは、ガンダムですら一人で完結して操縦しているが、よくよく考えてみれば視界の狭いロボットの中で悪戦苦闘しながら操縦しているわけで、周りを客観視している人からのアドバイスは不可欠だろう。その点よく考えられている。
また、特車二課のメンバーは公務員であり一般のごく普通の人たちであって、間違ってもニュータイプとして覚醒したりはしていない。
そのため、得意なことと苦手なことがあり、フォワードもバックアップも地道に訓練をして習熟していくしかないし、先輩がバックアップになればフォワードは委縮するし、ケンカをすればチームワークはバラバラになる。そのあたりの人間臭さも魅力の一つ。
そんな彼らは世間から悪魔のように恐れられており、特車二課がくると解決するはずの事件ですらめちゃくちゃに破壊されると敬遠されているのがかわいそうである。
また、日常系を描くストーリーがメインなので、通常の相手は飲酒運転(レイバーの)やレイバー同士のけんかなどで、敵性の相手が設定しづらいのだが、その代わりに多国籍企業:シャフトエンタープライズに所属するレイバー開発部門が、自分たちの開発するレイバーのデータを取るために、軍用レイバーや試作機でありプロトタイプであるグリフォンを特車二課にぶつけてくる(もちろん法的にはアウト)。
ここのリーダー・内海課長が目的のためには手段を選ばない(そののちには手段のためには目的を選ばないと揶揄されるが)人であり、特車二課の前に立ちはだかることになる。
この辺のストーリーはOVAもコミックもTVアニメも共通しているが、細かいところでいろいろと差異がある。
特に、二号機のバックアップが、コミックでは熊耳武緒巡査部長(ショートカットの切れ者美人)だが、OVAではニューヨーク市警からの研修生・香貫花・クランシーであるところが一番の違い。
でもどちらも二号機の猪突猛進型パイロットである太田功を尻に敷いてスパルタバックアップするという点では同じ。
コミック版はシャフトのグリフォン及び内海課長との戦いがストーリーの主軸に置かれており、日常生活にも焦点を当てているOVAやTVアニメとは少しではあるが毛色が異なる。なのでどのメディアも別の作品としておいしく楽しめるというわけである。