観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

機動警察パトレイバー the Movie(1989)

 先日はコミックを紹介したが、こちらは劇場版のオリジナルストーリーアニメ。
最初に行っておく。相当ネタバレします・・・ほぼほぼネタバレなので、もう隠すのやめた。自己判断でお願いします。

 

オープニングでいきなり東京湾の「箱舟」から、にやりと笑いながら投身自殺をする男の姿。彼は天才プログラマー・帆場。そして不吉に鳴くカラスから物語が幕を開ける。
東京湾を丸ごと埋め立てて有効な土地利用を行おうとするバビロンプロジェクト。大量のレイバーが必要となり、これらを製造する巨大な大規模工場が東京湾内に作られた。多層構造を持つこの構造体は通称「箱舟」と呼ばれた。
特車二課第二小隊の1号機バックアップ担当・篠原遊馬は、レイバーメーカーとして有数の大企業である篠原重工の社長の息子だが、親とケンカして勘当同然で家を飛び出し、現職についている。最近東京で多発するレイバー暴走事件が何かおかしいと、実家の伝手も容赦なく使って単独捜査を始め、暴走したレイバーすべてに搭載されていたHOS(ハイパーオペレーティングシステム)が怪しいと推測する。
実は同じ推測を行っていた第二小隊隊長・後藤喜一は、HOSの開発者で謎の死を遂げた帆場についての調査を、昔なじみの松井刑事に依頼していた。
HOSがある特定の周波数を感知すると暴走するというところまで突き止めたところで、販売元の篠原重工がすべて回収するとの声明を発表、騒ぎは収束するように思われた。
改めてシミュレーションを行う遊馬と整備班のシバシゲオ。HOSを旧OSに書き換えればOKという簡単なものとは思えず、一度インストールしたレイバーは汚染されたままとみるべきである。が、どう考えてもそんなに大した影響は出ないように思われた。
が、シミュレーターに「箱舟」及び数日後にやってくるという台風の情報をインプットしたところ、驚愕の事実が発覚する。箱舟の多重構造に台風並みの風が吹くと、これまで考えられなかったほどの音の大きさとなり、東京のみならず関東近県で弩級規模のレイバー大暴走が起きてしまう。首都圏が壊滅する・・・!
この状況を打破するため、第二小隊のメンバー、および一号機・二号機は箱舟へ向かうのだった・・・「箱舟を、ぶっ壊すのさ!」(遊馬のセリフ)。

OSが実はウイルスだった的な話を、まだWindowsもメジャーではなく、MS-DOSしか使ってなかったような80年代に書いているというのがそもそもすごいが、それと箱舟を結びつけ、最後の大活劇につなげるこの話の持っていき方にしびれまくった。かっこよすぎる!

大変な投資の末に成立していると思われる箱舟だが、これを首都圏全体のレイバー大暴走を防ぐためとはいえすべてパージ(床を切り離して落とす)しようと考える大胆さもしびれる。
「俺達帰った時に英雄になってるか、犯罪者になってるか・・・」というギリギリの瀬戸際のところを、やる!と判断しているわけで、その判断をした後藤隊長のかっこよさがまた光りまくるわけである。
それ以外にも細かいところのSF考証にこだわりまくっている。一番好きなのは、レイバーが東京下町の川で格闘戦を演じた後、バッテリーが破損して内容物が飛び出し、レイバーも川一面も全部凍り付く、というシーン。
この時代のレイバーは低温超電導電池で動いている、という設定なので、液体窒素のようなもので冷やしながらバッテリーを貯めており、それが壊れて冷却液体が漏れ出ると当然周りのものは凍り付くのだが、こういうSFとしての正確性を妥協なく、でもサラッと表現してしまうのがイカす。
また、帆場の足取りを追う松井刑事たちは、まさに東京が開発されていく狭間で忘れ去られ、朽ちていく建物や地域をめぐっていく小さな旅に連れていかれたようなイメージ。帆場は東京のこういうところを、バビロンプロジェクトがないがしろにするのだということを知らせたかったのではないか・・・
こういう哀愁漂う、反対側の正義もきっちり抑えているのが奥深い。
でもやっぱりパトレイバーかっちょいいわ。出渕裕のデザインが冴えまくってる。持ってる武器もライアットガンとか電磁警棒とか、人間の武器の延長なのが泥臭くて萌える。

正直なことを言うと、僕の中では全映画作品の中でこれが一番面白いベスト1映画なのである。アニメなんかとバカにされそうだが、面白いものは面白い。

機動警察パトレイバー 劇場版 [Blu-ray]

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