観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

ファースト・レンズマン(1950 エドワード・エルマー・スミス レンズマン・シリーズ)

 レンズマンシリーズの外伝的な作品の一つで、レンズマン誕生秘話的な話。

地球人類は原子力による第三次世界大戦で消耗・疲弊した後、残った国々により復興を成し遂げていた。その後、他惑星人たちとの邂逅を果たし太陽系文化圏が形成された。
しかし、知的生命の文化圏が拡大するにつれ、昔から内容されていた問題が同じく規模を大きくして顕在化していた。あるところで犯罪が起きると、例えばアメリカでは州警察は州をまたいで逃げられると逮捕できなかったが、アメリカ全土で警察活動ができるFBIが誕生した。それが国家間をまたがる犯罪になるとインタポールとなった。しかし星をまたいだ場合は?さらにそれが恒星間になった場合は?
地球の警察官が他星に行った場合、自らの身分を証明することは難しい。その国の警察官が誰なのかすらわからないし、警察という文化があるかどうかすらわからない。
太陽系評議会議長にして三惑星連合軍の長であるバージル・サムスは、この問題を解決しようと頭を悩ませていたが、天才肌の科学者、ネルス・バーゲンホルムからアリシアという謎の惑星に行くよう進言される。バーゲンホルムは地球人のサポートをするべくアリシア人が地球人としてその姿を変えていたのだった。
サムスはアリシアでレンズを授かる。レンズは正しい心を持ったものでなければ装着できず、一つ一つは固有の周波数を持っており当人しか着用できない。それ自体がテレパシー機能を有しており、サムスの悩みをすべて解決するものだった。
ファーストレンズマンとなったサムスは、できる限りレンズマンの数を増やそうと、周りにいる信頼のおける者たちをアリシアへ送り、次々とレンズマンが誕生した。
サムスと、その盟友であり公安委員長のレンズマン:ロデリック・キニスンは、来るべき星間文明勃興のための銀河パトロール隊を立ち上げ、その参加資格をレンズマンとすべく尽力する。
当初、人々はレンズマンが何なのか理解しておらず、本当にその得体のしれない力を持った人々に強権を与えてよいのか懐疑的だった。また、その存在を疎ましく思う犯罪組織の横やりが入る。
ロデリック・キニスンは太陽系評議会に最も影響力がある役職であるアメリカ大統領に立候補し、レンズマンたちはそれをバックアップする。対立候補をバックアップしているのは、カロニア人を中心とする犯罪組織。果たして結果は・・・

太陽系の人たちが銀河へ躍進していけるのは、バーゲンホルムによる無慣性航行の完成であり、これによって光の何万倍もの速度で宇宙船を飛ばせるようになるのだが、これってアリシア人が人類に与えたということで、そもそも人類の力では自らそれを創造できなかったということになる。アリシア人のバックアップって結構露骨だったんだなぁ。

また、ロデリック・キニスンは名前の通り、正伝の主人公であるキムボール・キニスンの直系の先祖だし、バージル・サムスはクラリッサ・マクドゥガルの直系の先祖に当たる。二人とも全くそんなことを匂わせていなかったが、例えば織田信長坂本龍馬の子孫的な扱いなわけで、どちらも話題にしないわけがないだろうと思うのだが、作品的にはファースト・レンズマンの方が後なので、仕方ないと言えば仕方ない。

サムスは様々な他恒星系に行き、レンズマンになれる人材を探しに行くのだが、そこで訪れる奇妙奇天烈な他星文化の描写がとても面白く、まったく相いれないと思っていたのに「道路に広告が多すぎて困るよね」というところで初めて意気投合した、なんてあたりは心躍る。うまいね~。

また、サムスとキニスン達の尽力により銀河パトロール隊が創設されるのが感慨深い。このあと銀河系全体で億を超えるレンズマンが生まれるんだよなぁ。その始祖こそアメリカ系地球人であるというあたりが当時のSFっぽいが、まあみんな地球人なんだからそういう細かいことはいいのだ。