渦動破壊者(1960 エドワード・エルマー・スミス レンズマンシリーズ)

 レンズマンシリーズ第7弾だが、主人公はレンズマンではなく、外伝のさらに外伝的な扱い。
この時代でも原子力エネルギーは主要な発電力として使用されていたが、突如制御不能となり、破壊できないエネルギー過流として新たな公害化していた「原子渦動」。これが惑星に一つ二つできるだけで、その星は荒野と化してしまうほどの深刻な災害となり、銀河文明の問題となっていた。
核物理学者:ニール・クラウドは、原子渦動によって愛する妻子を失い、本人も瀕死の重傷を負う。しかしその中で彼の直感型超計算能力で原子渦動の数秒先のパワーを予測し、ピッタリ釣り合うだけのデュオデュック爆弾を投下することで、原子渦動を破壊し、増大させることも分裂させることもなく、消滅させることができた。ここに銀河でただ一人の「渦動破壊者」(ヴォルテックス・ブラスター)が誕生した・・・

時代的には第二段階レンズマンの後で、銀河文明がひと時の平和を満喫していた時期に当たる。銀河調整官のキムボール・キニスンもちょい役で出演する。
このあと、ニール・クラウドは自身の宇宙船を与えられ、銀河各地の原子渦動を破壊しながら、数学者でありコンピュータ技師でもあるジョーンをはじめとする同乗者たちと宇宙を巡る旅に出るのだが、正伝では名前しか出てこない異星人が感情豊かに描かれており、ヒーローばかりではなく一般市民たちで銀河文明が構成されており、それぞれの文化があることが実感できるのがよいし、各地でそれぞれに活躍の場があり、楽しませてくれる。
また、ニールとジョーンの中年同士のラブロマンスがまたいい味を出していて、初めて読んだのは中学生当時だったが、ドキワクして読んだものだった。
なにしろレンズマンが出てこないので話としては地味。なのでAmazonなどのレビューもだいぶ酷評が多いのだが、この妙味な雰囲気を楽しめてこそのレンズマンファンであろう。
ただ、無限にある宇宙線エネルギーで、光の何千万倍の速さで宇宙船を飛ばしているくせに、いまだに原子力使ってんのかよ、という根本的な疑問が湧くのは仕方のないところ。まだこれが書かれたころはやっと原爆が周知されたくらいで、未知なる未来のエネルギー扱いだったわけだし、そこは大目に見なければなるまい。

ラストのオチというか真相がまたぶっ飛んでいてよい。まあ、なんでキニスンがこの事実にぶち当たらなかったのかと少し問いただしたい気もするが、まだまだ銀河系は広いということであろう。

渦動破壊者 レンズマン・シリーズ

渦動破壊者 レンズマン・シリーズ