アニメファンの間では一般常識的な一大シリーズの外伝的な位置づけに当たる作品だが、一般人からするとこのシリーズはかなりなじみが薄い。
原作がゲームだからというのが一番大きなポイントだが、それ以外にも専門用語や独自の概念が多すぎて理解しづらいという点も大きいだろう。
しかし、一流のクリエイターが妥協なくそれらの情報を詰め込んだ結果、これだけの人気を博したわけなので、わかる人だけわかればよいのかもしれない。
本作をこんな木っ端記事で説明するのは不可能に近いので、ほぼ骨抜きではあるが概要の概要だけ触ると、もともとはストーリーブック的なゲームとして制作された「Fate/Staynight」が大元。
日本のとある地方都市、冬木市では、7人の魔術師(マスター)が、歴史上・伝説上の人物である英霊(サーヴァント)を従えて殺し合いを行い、最後の一人がどんな願いもかなえるという聖杯を獲得するという「聖杯戦争」が、過去数回行われており、本作は第四次聖杯戦争を描いている。
サーヴァントにはぞれぞれ属性があり、以下の7種類が存在している。
セイバー(剣士)
ランサー(槍兵)
アーチャー(弓兵)
ライダー(騎兵)
キャスター(魔術師)
バーサーカー(狂戦士)
アサシン(暗殺者)
直接的な戦闘力ではセイバー・ランサー・アーチャーが優れているが、機動力ではライダー、爆発力ではバーサーカー、奇襲や搦め手の攻撃ではキャスターやアサシンが有利など、ぞれぞれの属性に応じた特異な能力があり、それぞれに該当する過去の歴史・伝説上の人物が召喚されこれらのサーヴァントになる。サーヴァントの本当の名(真名)を知られると、それがどんなサーヴァントで何が得意かなどの情報も洩れ不利となるため、通常マスターはサーヴァントのことを上記の属性で呼び、真名は用いない。
マスターは自らの魔術を体内でくみ上げた魔術回路を持っており、その力は代々血統として引き継がれていく。何代も継承されてきた魔術回路の方が強大である。この魔術回路とサーヴァントにゆかりのある憑代となる聖遺物を使って儀式を行い、サーヴァントと契約する。
契約を完了したマスターの手の甲には「令呪」呼ばれる、サーヴァントを使役する資格の証が刻まれる。令呪は三画で構成されており、サーヴァントへの絶対命令権を3つもっており、一つ消費するごとに一画ずつ消えていく。
サーヴァントはマスターの魔術力によって世に顕現しており、この量が不十分だと十分な力を発揮できなくなるなどの弊害が発生する。
マスターの魔力や得意領域、サーヴァントの得意分野や性格、そして敵のそれらの特性など、さまざまな要素を考慮しながら殺し合いを行っていくわけである。
「Fate/Staynight」では第五次聖杯戦争が描かれているが、本作「Fate/Zero」では第四次聖杯戦争が描かれており、本伝の前日譚となっている。
ではなんで「Fate/Staynight」ではなく「Fate/Zero」を先に取り上げたのかというと、Zeroを先に見てしまったからである。それまではFateの存在を全く知らなくて、ただただそのシーズンに話題になっているアニメ、ということで前知識なく観始めたのだが、これが面白くてはまってしまい、調べてみたらこれが外伝であったというのが一つ。
また、「Fate/Staynight」の主人公である衛宮士郎や遠坂凛、そして彼らの友人でありマスターの一人である間桐慎二やその妹でキーマンの間桐桜は高校生であり、陰惨な殺し合いを行うストーリーでありながら青春要素やラブ要素もそこそこ入っていて、バランスはとれているもののシリアスさでは少し物足りないこともある(別ルート「Unlimited Blade Works」や「Heaven's Feel」を描いた後年のアニメや映画はその点をかなり補完しているが)。
しかし、この外伝である「Fate/Zero」はほぼほぼ大人しか参戦していない(一人だけ高校生のウェイバー・ベルベットがいるが、やはり彼のパートはちょっとヌルい)ため、陰惨さやシリアスさが極限まで描かれていて一切の妥協がないのがとてもよかった。
最初にアニメを見て、そのあと小説版を読んだのだが、アニメではわかりにくかった細かいところが理解できてよかった。もともと本を書いたのも脚本も、今を時めく虚淵玄なので、ちょっと引いてしまうくらいの残酷さと思い切りが彼の持ち味であり、アニメも小説もその辺は抜かりがないのであろう。