宇宙のスカイラーク(1928 エドワード・エルマー・スミス)

 今から100年近く前に発表された、レンズマンシリーズの作者のもう一つのSFシリーズ小説。

アメリカの研究所で働く物理化学者リチャード・シートンは、自分の研究室で、プラチナを生成したあとの残滓に含まれていた金属を分離する作業を行っていたが、突然研究室の壁に大穴が空き、唖然としていた。
色々調べたところ、隣の部屋に置かれている特殊なサイクロトロン「ワッツィトロン」が発生させる場の中で、その金属に銅線から電気を流すと、その金属が触媒となり、銅のエネルギーが100%解放されることが分かった。
この金属を「X」と名付けたシートンはそのポテンシャルに気付き、親友であり富豪のクレイン・シートンに相談し、その金属を合法的に研究所内の競売で競り落として入手した後、研究を重ねてX金属の実用化に着手し、宇宙船を建造した。宇宙船はシートンの婚約者ドロシーによって「スカイラーク」と名付けられ、着々と準備が進められた。
しかし、シートンの研究所の同僚で、「ワッツィトロン」の開発者であるデュケーヌは、シートンが発見したX金属の有用性に気づき、悪徳業者と共謀してシートンを殺してXを奪おうとしたがうまくいかず、Xのみを盗み出した。
その後デュケーヌはシートンの宇宙船の設計図を入手して同じものを建造し、ドロシーを誘拐して宇宙へ逃亡する。
シートンとクレインはさらに改良を重ねた「スカイラーク2号」を建造し、デュケーヌらとドロシーを追って宇宙へ旅立つのだった・・・。

本作はスミスのデビュー作だが、100年前に書かれたとは思えない自由な発想と壮大なスケールに感動して身震いしてしまう。
銅のエネルギーを100%開放するという発想がまずすごい。例えば原子力で言えば、核分裂によってごくごくわずかな質量がエネルギーに変換されるだけであの膨大なエネルギーが発生しているわけだが、それを100%開放できるとなるとどれだけものすごいエネルギーになるか想像もつかない。
光速も当たり前のように超えていく。のちにレンズマンシリーズで理論づけられた無慣性航行のような派手な理屈はないのだが、やはり宇宙SFは光速を越えてなんぼであろう。

最初の方は目新しい宇宙旅行自体が驚異であり冒険なのだが、物語の後半ではオスノーム世界へたどり着き、異星人たちとの交流や冒険が繰り広げられる。異文化との接触という意味でもなかなか興味深く、オスノーム人たちと使用している可視光線の周波数が異なるため、彼らのライトの下では地球人の肌や服も普段見ている色とまるで違う色になってしまうし、オスノーム人がスカイラーク号のライトの下に来ると皆恥ずかしがってしまうというくだりも興味深い。
そしてオスノームのアレナックという強靭な金属でスカイラークを建造し直す描写や、アレナックの製造に塩が欠かせず、シートンたちが食事のためにもっていった微量の塩を大切に使っている様など、よく考えられているなあと感心する。

過去、本作を何人かの人に読むよう勧めたのだが、皆一様に、内容が古すぎてついていけないと言われてしまった。確かに「X金属」だからなぁ・・・クレインの使用人が日本人で謎の武術を使うし。いつの時代だよと言いたくなるのもわからなくはない。ただ、100年前でこの発想というのは稀有であり、愛でるに値すると今でも思っているので、定期的に読み返すために、所有している文庫とは別にメルカリでもう1セット手に入れた。今後もずっと読み返すことだろう。

宇宙のスカイラーク

宇宙のスカイラーク