デューン/砂の惑星(1984)

元々はフランク・ハーバートのSF小説が原典。
もうすぐ公開される予定(2021/10/15)の映画はリメイクにあたり、ここではその原点となっている、デイヴィッド・リンチ監督の劇場版「デューン/砂の惑星」を取り上げる。
西暦1万年以上の未来世界。人類は機械やAIを発達させることで文明を発達させ、宇宙に進出していったが、機械やAIから反乱を起こされ大戦争が勃発する。
その教訓から、中世的かつ精神文化が発達した独自の文明を作り上げた人類は帝国制を敷き、安泰であるかのように見えた。しかし、宇宙船をジャンプさせ長い距離を航行する航宙士(ナヴィゲーター)のスペースギルドや、超能力を持つ教母集団ベネ・ゲセリットなど、皇帝の権威が届かない独自のグループもおり、それぞれが暗躍しており決して平和ではなかった。
彼らが共通して欲しているのはメランジと呼ばれる香料(スパイス)である。これは砂しかない荒涼たる惑星アラキスでしか採取・精製できないが、航宙士がスペースジャンプをしたり、ベネ・ゲセリットが力を発揮するのに不可欠とされており、どの勢力もアラキスに注文していた。
皇帝は、台頭してきた勢力であるアトレイデス公爵家を、子飼いであるハルコンネン男爵家と対立させようと画策するが、それに対してスペースギルドから、「アトレイデスの跡取りであるポール・アトレイデスを殺せ」という謎の進言を受ける。
その策略により、ハルコンネン家に代わり惑星アラキスへの着任を任じられたレト・アトレイデス公爵は、それらの策略をすべて読みつつも移住を完了させるが、ハルコンネンの手は想像以上に早く、より深く迫っていた。
身内の裏切りからハルコンネンの侵攻を許し、ㇾトは殺害される。レトノ妾妃・ジェシカとその息子ポールは辛くも逃げ延び、砂漠の民・フレメンに助けられる。
そこでポールは自らの運命を知るのだった・・・

この映画は中学生の頃に封切られ、直接劇場では見なかったが、ほどなくしてテレビ放映されて、その圧倒的な映像美と世界観に衝撃を受けた。
しかし、話があまりにも難解で、出てくる固有名詞も「ベネ・ゲセリット」「ムアディブ」「クイザッツ・ハデラッハ」などなじみがない名前ばかりで訳が分からなかったため、ちょうどSF小説にはまり始めた時期だったこともあり、原作のフランク・ハーバートの小説を集め、読み出したところ大ハマりした。
もちろんすべて内容を理解できたわけではなかったが、厨二心をグリグリとえぐりくすぐる設定目白押しで、なんてカッコいいんだろうと感動したのを覚えている。
一度小説を読んでから再びこの映画を観ると、制作者の思い入れの深さと、精緻な映像に再び感心し、より没入できるようになった。

後で知ったのだが、映画自体は大コケで、評価もかなり悪かった。デイヴィッド・リンチ監督自身が本作を失敗作と認め、自身の経歴の中の黒歴史的な扱いをしているほどである。
というのも、もともとリンチはこの作品を4時間半で製作したのだが、映画会社から劇場公開にそぐわないとして切り刻まれ、2時間17分に短縮されて封切られてしまった。
当然ながら話はダイジェスト映画のようになり、ところどころつじつまも会わないし心的描写も足りないという残念な映画になってしまったのだった。
また、のちにTVでは189分の長尺版も放映されたのだが、これもリンチの意向はまったくくみ取っておらず、適当な挿絵だけの状態で冒頭7分も延々と続く冗長な説明読み上げから始まるといういただけない内容で、ちょっとだけ劇場版でカットされた幻の映像が使われていたことだけがよかったという悲しい編集。これに自分が監督であるというクレジットを使われるのを潔しとしなかったリンチが、監督名を偽名「アラン・スミシー」に変えたほどである(この「アラン・スミシー」は、当時のハリウッド映画業界で、プロデューサー優位で立場の低かった監督が、自分の意に沿わずに出来上がった作品に抗議する際に慣例的に用いられてきた偽名である)。
でも、個人的にはそれでもこの映画は好きで大傑作だと思っている。
とにかく美術や衣装が半端なくすごい。これを映画を撮るためだけに作って、撮影したら壊しているかと思うと何と贅沢なことをしているのだろうかとため息をついてしまうほどに美しく荘厳。
そして役者たちの演技も素晴らしい。難しい役どころだが、映画初出演・初主演のカイル・マクラクランは見事にポールを演じて見せた。のちにツインピークスをはじめとする様々な話題作に出演することになる。
そして一番は巨大な砂虫(ワーム)、そしてフレメンからは「シャイフルド」と呼ばれるサンドワーム。これのスケールの大きさ・迫力がとにかくすごい。

ただ、小説版の名前になじみがあったので、劇場版とのちょっとした際に改めて気がついて気になった。

 小説版  劇場版

 ムアドディブ ムアディブ

 フレーメン フレメン

 クイサッツ・ハデラッハ クイザッツ・ハデラッハ

 アトレイデ アトレイデス

などなど。
小説版でなじんでいたので、こっちに合わせてほしかったなぁ。まあキメの問題だが。


今回改めて「日本公開30周年記念特別版Blu-Ray」を買ってしまったのだが、それで改めてポールがサンドワームに搭乗するシーンを見ると感動のあまり鳥肌が立って涙がにじんでくるほどである。ああかっちょええ。
この特別版を見て初めて知ったのだが、リンチの前にホドロフスキーという人が映画化しようとして挫折していたようだ。そのキャスティングがまたすごいのだが、これはまた別の話で、ドキュメンタリーが「ホドロフスキーのDUNE」というタイトルで映像化されているようなので、何とか視聴して別の機会に紹介したい。


それにしてもまた「砂の惑星」がマイブームになってしまった。
今度封切られるリメイクも観よう。小説も読み返そう。