最近のSF小説を読んでないな~と思い、「SFが読みたい!2020年版」で1位になっていた本作を読んでみたが、久しぶりに読むSFとしてはだいぶ癖強めだった。
本書は8つの短編からなる短編集。
・環刑錮(かんけいこ)
犯罪を犯すとミミズとかイソメとか系の環虫類に変身させられて
ひたすら石交じりの土を食べさせられるという刑罰を受ける
・金星の蟲(むし)
痔かと思ったら金星サナダムシというでかめの気色悪いのが
お腹にいた
・痕(あと)の祀り(まつり)
ウルトラマンが戦った後の怪獣の死体処理班のお仕事
・橡(つるばみ)
月の幽霊たちが地球に帰ってきた話
・ブロッコリー神殿
異世界の植物界、華の精たちの話
・堕天の塔
月世界にある塔で作業をしていたら、塔が穴の中をひたすら
落下していった
・彗星狩り
星間を行き来できる生命たちの話
・クリプトプラズム
意識を別の人形に移して使役する世界で「オーロラ」に
存在する生命の研究者
まず一目見て驚いたのが見たこともない漢字とルビの洪水。本当にある熟語なのか創作なのかがまずわからないし、言葉の意味もよく分からないまま積み上げつつ読んでいくと、「意味が分からない積み上げ」がどんどん増えて行って詰む。
ただ、あまりにも説明がないので「この世界ではこの言葉が日常的に使われているのだな」という雰囲気的理解に至り、こんな会話をしている世界に住む人・生命とはどんなもんなのだろうかということに思いを馳せることになる。それが心地よい。
また、どの作品もグチョッというかネチョッというか、グロめな粘膜系の不快感描写が執拗に行われる。作者はそういうのがだいぶ好きなのだろうなぁと思うが、こういうのが久々だったのでだいぶ刺激的だった。
70~80年代の日本SFで育った身としてはとても新鮮で、日本のSFも進化したのだなぁと感じ入ったが、作者は僕とほぼ同年代。すごいな~。
巻末の大森望の解説で改めて思ったが、上記のような執念じみた作品が簡単に生み出せるはずもなく、長い時間をかけて、試行錯誤の末に生み出されたということなのだろう。血と汗と涙を感じる作品集だった。