横浜駅SF(2016 柞刈湯葉)

WEB小説サイト「カクヨム」のコンテストでSF部門大賞を受賞し、カドカワBOOKSで書籍化。
日本SF対象候補にもなり、話題にもなったので存在は知っていたが、当時はあまりピンとこず、今になって読みたくなって読んだ。

冬戦争と呼ばれる世界大戦から200年が経過した。日本列島のうち、本州はほぼ増殖した横浜駅に覆われていた。
戦争中に開発された人工知能であるJR統合知性体が、自己保存のために日本中に張り巡らされたネットワークノードが自律的に修復できるような機能を導入したところ、それが導入された横浜駅が制御不能となり、癌細胞のように日本中を覆いつくすようになっていった。
そのため、本州の地表はほぼ横浜駅化された。
横浜駅の中に住む住民はエキナカと呼ばれ、6歳になった時に50万ミリエンを支払いsuicaチップを体に埋め込んだ者だけが駅の中で生活することができる。
6歳以上でsuicaを持たないものは、「自動改札」と呼ばれる自律型ロボット兵に駅外へ放逐されてしまう。
そうやって追放されてしまった人間たちはエキソトでコロニーを作り、時おり横浜駅が廃棄するお弁当や食料などで食いつないでいるのだった。
エキソトの人間はsuicaを持っていない。エキナカは「スイカネット」と呼ばれるネットワークが広がっており、それによってsuica判定が行われたり、自動改札が制御されているため、エキソトの人間はエキナカには入れず、無理に入ろうとしても自動改札に押し戻されてしまう。
エキソトの九十九段下で育ったヒロトは、エキナカからからさまよってきた「教授」から頼まれ、横浜駅内の「42番出口」へ行くように言う。そして「キセル同盟」を名乗る男から5日間だけ横浜駅へ入ることができる「18きっぷ」を手に入れ、横浜駅の中へ旅立つ。
そこで、JR北日本工作員アンドロイド・ネップシャマイや、キセル同盟の元リーダー・ケイハと出会い、「教授」から託された42番出口を目指すのだった・・・

もう聞いているだけでワクワクしてくる概念や名称。素晴らしい。
元々の発想が、いつまでたっても永遠にどこか工事をやっていて進化を無限に続ける横浜駅(いつも工事ばかりで歩くのほんと不便なんだけど、いつになったら終わるんだよ!)をモチーフにしており、シニカルなジョーク的なイメージが非凡な才によってぐんぐん広がった結果こうなったのだろう。
横浜駅が富士山を覆っており、とか、関門海峡では横浜駅の増殖を止めようとJR福岡が戦争状態になっている、とか、何でもかんでも横浜駅が猛威を振るっているというのがめまいがしそうなほどシビレる設定で非常によい。SFってこういうのなんだよ・・・!

アンドロイド君たちともっと冒険を繰り広げてほしかったのだが、ラストは意外とあっさり目。前半で横浜駅の描写のボリュームが多かったので、1冊に収めようとしたらまあこうなるしかないが、まだまだもっと遊べそうな概念や風習などがあって、もったいないなあと思った。
それらを部分的に拾い上げた外伝「横浜駅SF 全国版」が出ているので、続けて読もうと思う。