観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

ドライブ・マイ・カー(2021)

仮面ライダーBLACK SUN」で感動したので西島秀俊つながりということと、アマプラでいつの間にか無料になっているのを発見したので観た。
村上春樹も文芸映画もほとんど見ていないので、物知らず発言を最初にお詫び申し上げます。

舞台俳優の家福(かふく)は、愛妻の音(おと)と仲睦まじく日々を過ごしていた。
音はセックスのあと、決まってある物語をつぶやくのだが、あとでそれを聞いても覚えていないのだった。家福はそれをメモで残しておき、あとで音に聞かせ、音はそれを脚本にすることで脚本家として成功している。
また、家福は車に乗る際、チェーホフの「ワーニャ叔父さん」のセリフを練習するため、音が相手方の方だけ吹き込んだセリフのカセットを聞き、それに返す形で自分のセリフを発声するのが日課であった。
ある日、ウラジオストックの演劇祭に審査員として招かれた家福は、飛行機が欠航したため家に帰ると、そこでは音が見知らぬ男とセックスをしていた。家福はばれないようにそっと扉を閉じ、空港近くのホテルへチェックインすると、ウラジオストックへ到着したかのように装って音とビデオチャットを交わした。
ある日家福が家に帰ると音が倒れており、そのまま帰らぬ人となった。
二年後、「ワーニャ叔父さん」の上映で名声を得た家福は、舞台演出家として広島の演劇祭へ招聘された。そこに2か月の間滞在し、役者をオーディションで選び、「ワーニャ叔父さん」を上演する。
それぞれの役者が母国語でセリフを言うこの作品は、投影された訳語を見ながら視聴するというスタイルで、オーディションに募集してきた役者たちも様々な国の俳優たちである。
その宿への行き来で主催側からつけられた条件は、専属ドライバーが送り迎えするということ。家福は、愛車である「サーブ900ターボ」は癖がある車で、運転自体が自分のストレス発散となり、考えをまとめる場所でもあることから固辞するが、過去事故があったとのことでどうしてもと言われ、仕方なくドライバー・みさきに任せることにした。その運転の確かさと控えめなみさきの態度に家福は好感を持つ。
過去、音と交流があった出演俳優の一人である青年・高槻と、家福、みさきを交えた三人の物語が交錯する・・・

あらすじを書いてみて気がついた。いつも見ているエンタメ作品と異なり、勢いでストーリーを記憶しにくいので、覚書としては全部書いておかないと端から忘れてしまう。
まあでも、未来の自分に期待してこれくらいで許してもらおう。
最初、どう楽しんだらよいのだろうと困った。強い刺激に慣れ過ぎていて、じりじりと焦らされるストーリー展開に、もたもたしていると感じてしまう登場人物たちの感情の起伏がもどかしい。
見ているうちにそのゆったりした時間の流れに慣れていき、頑固で意固地だけど初心で傷心の主人公・家福に感情移入していき、彼を取り巻く人々の善意・意地・決意などが間接的に感じられるようになった。
ただ、それを考慮に入れても、この家福という男はだいぶ甘えん坊なイメージ。もちろん強い男であればお話として成立しないので、繊細で傷ついていて、自分探しの最中の中年のおっさん(でもイケメン)が必要なのはわかるのだが、こちらはイケメンでもなければ自分探しをする余裕もないので、いい男はいいよなぁというのが正直なところ。
そして岡田将生演じる高槻が、女性と片っ端からそういう関係になりまくってしまう男で、作中で明言はされないものの音とヤっていることは確定な青年。いろいろと悩んだり困ったりしてはいるようなのだが、おっさんからするとイケメンで若くてモテていたら他に何もいらないだろうとやっかみが先に来てしまい、彼の感情の機微にまで心が行き届かない。スマン。
スタッフと女優の韓国人夫婦、高槻といい仲になってしまう台湾人女優など、ちょいちょい個性を発揮するメンバーが出てきて彩を添える。
三浦透子演じるみさきが語る彼女の不幸人生と交錯することで家福の感性が揺り動かされるところがクライマックス。彼女の不器用ながら強い生き方に影響を受け、家福の感情が喚起される様が、どちらもいい演技だなぁと感心した。

村上春樹は数篇しか読んだことがないのだが、どの話においてもやたらとセックスのことを強調したり連呼したりしていたので、根本的に好きなんだねぇ。
セリフなので仕方がないが、西島秀俊がやたらと「セックスセックス」言うのを聞いてこちらが気恥ずかしくなった。