何の気なしにアマプラで見始めたのだが、今まで観た中で一番難解というか、知恵が必要な映画だった・・・
ウクライナ・キーウの劇場でテロ事件が発生。主人公はウクライナ警察に偽装した形で潜入したCIAのエージェントで、重要人物の救出と重要品の奪取を任務としていた。以降、主人公の名前が出てくることは一切なく、クレジットも「名もなき男」としか出てこない。
作戦は失敗し、男はロシア側にとらえられて拷問を受け、歯に仕込んであった自決用の毒薬を飲み、意識が途絶える。
しかし、男は見知らぬ船の中で再び意識を取り戻す。そこには一人の男がいて、「あれは君を試すための作戦だった」と明かし、第三次世界大戦を回避するための組織「テネット」へスカウトされる。
指示に従いとある研究所へ行くと、そこでは「逆行する弾丸」を見せられる。時間を逆に進む弾丸は、撃つ前に存在した弾痕が銃口の中へ戻っていくのだった。男はこれと同じ現象をキーウの劇場で見たことを思い出す。それは、時間逆行装置「アルゴリズム」によるものであった。彼がキーウでプルトニウムと教えられて確保しようとしたそれがまさにアルゴリズムの一つであり、9つに分けられ未来から過去に送られた残りのアルゴリズムの存在を知ることになった。
男は弾丸製造の線を追うためムンバイへ飛び、テネットの協力者ニールと会って武器商人と接触するが、武器商人の男ではなくその妻の方が黒幕であった。
男は武器商人の妻から、ロシア人の武器商人セイターが関与していることを知らされ、その妻であるキャットと接触する。キャットはかつて美術品の贋作者アレポと不倫しており、セイターは脅迫のネタに使えるとその贋作品を落札し保管していた。
キャットの支持を得るため、セイターから贋作品を盗み出そうとする男はニールと共に、目的のものが保管されているオスロの美術品倉庫「フリーポート」へ潜入するが、そこであからさまに怪しい動き方をする謎の二人組と交戦する。
セイターは未来人と共謀して第三次世界大戦を発生させ、世界を滅ぼそうとしていることを知った男はセイターと接触をはかるがうまくいかず、キャットはセイターに撃たれて重傷を負ってしまう。
キャットを治すため時間を逆行する男たち。その中で、フリーポートで接触した二人組が実は男とニールたち自身であることがわかる。また、セイターとのアルゴリズム争奪戦では逆行状態でカーチェイスを行い死闘を繰り広げる。
セイターが死ぬと生体認証が作動してアルゴリズムが完成し、世界全体の時間逆行が起き、世界が滅ぶことを知った男たち。テネットの実働部隊が、アルゴリズムの一つが隠されているロシアのスタルスク12へ、時間を逆行してアルゴリズムの発動を阻止するべく作戦を開始し、男たちもそれに参加する・・・
…覚書として書いてはみたものの、何を言っているのかわけわからんなぁ、これ。
こんなに何度も何度も映像を観返して、Youtubeにアップされている解説動画を何度も繰り返し見聞きした映画はこれが初めて。
特に時間逆行の概念がわかりづらくて、往年の古いSFになじんだ身からすると却って腹落ちしないところが多い。特になじまなかったのが、「未来は確定しており、どんなに現在であがいても未来を変えることはできない」という点。ほとんどのSFは「未来は変えられる」前提となっており、それはすなわち現在を生きる人々に夢と希望を与えなければならないためだが、理屈を幾重にも重ねた本作のようなストーリーでは不確定未来は邪魔でしかなく、大前提のルールとして定めたということなのだろう。
そして時間の順行と逆行が入り混じるという、寡聞にして初見のシーン。映像は逆回しにすればよいだけかもしれないが、実際にこの中に参加したら脳が理解できずに爆発しそう。
しかし、時間は逆行しているのに重力は一定なの?慣性は?いろいろと疑問はあるが、見せ場としては大迫力で見ごたえ十分。でも理解するのがほんとに大変、というか未だに理解できた気がしない。
あと、クリストファー・ノーランの作品ではおなじみのあの耳障りの悪いノイズ的BGM。効果的なのは認めるがほんと居心地が悪くなるというか不安になるというか、見ている側の不幸せ感を煽るなぁ。正直苦手。
主人公の「名もなき男」が、なんとなく世間知らずというか若すぎるというか、最後までそんな印象がぬぐえなかったのだが、あとからデンゼル・ワシントンの息子だということを知った。お坊ちゃまだったか~。
キャット役のエリザベス・デビッキが非常に美しいのだが、それ故に日本人の主観的頭身とかけ離れすぎていて逆に怖い。こりゃかなわないわ。
終盤のニールのオチやキャットのくだりは、泣かせるが蛇足であるようにも感じる。まあ、こういうのがないとほんとに思考実験なだけで終わっちゃうもんなぁ。