観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

聖闘士星矢 The Beginning(2023)

ネタバレがっつりしているのでこれから観る人はご注意を。
もちろん事前に、「大爆死」「空席だらけ」などという情報は入っていたので、内容はおおよそ想像がついたが、小中高とこの漫画・アニメでお世話になりっぱなしであり、大きな影響を受けたコンテンツの実写ハリウッド劇場版とあっては、お布施を払わずにはおれない。ということで観てきた。
GW中の平日朝8時半上映開始という早い時間だったからなのか、それとも不人気故なのか、観覧者は僕を入れて8人。少ない~。
ほぼ全員、一人で観に来ている同世代のおっさんであった。まあそうなるよな。

星矢は地下の格闘場で戦う日々を送っていた。幼いころに生き別れとなった姉を探しながら。
そんな中、星矢はある不思議な力が宿り、それを追ってある組織に追われるようになる。その力とは「小宇宙(コスモ)」と呼ばれる聖闘士(セイント)の力であり、女神アテナの生まれ変わりであるシエナを守ることが運命であると告げられる。
シエナは実母:ヴァンダー・グラードに命を狙われており、父であるアルマン・キドの庇護のもと、匿われていた。
星矢はワシ座の聖闘士マリンの元で修業を積み、コスモを爆発させることで聖闘士としての力を使いこなし、ペガサス座の青銅聖衣(ブロンズクロス)を身にまとうことができるようになった。
しかし、ヴァンダー側にも鳳凰座(フェニックス)の青銅聖闘士・ネロがいた。二人の激闘が始まった・・・

映画を観に来る人はほぼ全員が昔のあの聖闘士星矢を実写で観たいと思ってきているわけだが、やはりハリウッド化された実写映画の宿命として、原作や元アニメをなぞるようにはならないのが世の常である。
本作もその例に漏れず、「聖衣がキラキラしてない」「聖闘士が美少年じゃない」「技名を叫ばない」などの肩透かし要因があり、それで皆がっかりしたと思われる。もちろんワタクシもがっかりしたクチである。
ただ、本作では聖衣をデザインするにあたり、原作者・車田正美は「原作の再現が大事なわけではなく、自分が聖衣をデザインした時も古代ギリシャの鎧を参考にした」というようなことを言っていたとのこと。また、CGには頼らない製作を行っており、その結果、遺跡で発掘された感じの甲冑のイメージが強い聖衣になっている。
まあ、原作者がそう言ったらそうなってしまうだろうなぁ。
ただ、製作側は、おそらく青銅聖衣という言葉で、二千年くらいたって青錆が浮かんだ遺跡物を思い浮かべてしまったと思われる。
実際使用されていた二千年前当時はもっとピカピカに磨かれて使われていたのではと思うのだが・・・せめて磨いてほしかったなぁ。
また、大人が観るに耐えるストーリーにする上で、技名を叫ばないというのも妥当な選択だとは思うが、それがないとただの殴り合いになってしまうので、もう少し工夫が欲しかったところ。
この聖闘士星矢というコンテンツを今の時代で一から作り直したいという製作側の意図はわかるしすごく頑張っていた。そこは評価したい。
ただ、劇場に足を運ぶ人の9割は懐かしいあの感じを味わいたくてお金を払っているわけで、そのファンへの配慮ももう少し欲しかったのが正直なところ。

しかし新田 真剣佑の筋肉がすごい。これCGだろ、と思うくらいのすごさ。
ものすごい努力の跡が見えて、それだけでちょっと感動した。
アテナがハリウッドのヒロインぽくて笑った。全くお嬢様っぽくないというか、生意気なことばかり言っていていつもケンカ腰、だけど時々デレる。
でもアテナとして覚醒すると、金髪だった髪が紫に変わるという原作への近づけ方となる。
あと、本作ではアテナの覚醒自体が世界への脅威として扱われているのが興味深い。海神ポセイドン編も、冥王ハーデス編も、アニメオリジナルのアスガルド編も、本来は神が覚醒して世界の脅威となることを阻止するのが聖闘士たちのおおよその目的であったわけで、アテナ自体もその脅威の一つという解釈は目から鱗だった。
また、原作で一番ダサいというか、もうちょっと考えろと思うのが、聖衣を重そうな箱に入れて背負って運ぶという持ち運び方なのだが、ペンダント型にしてスタイリッシュに処理していた。さすがに21世紀の聖闘士星矢で「箱を背負う」はないよな。
まあ、そこは「聖闘士星矢Ω」の「聖衣石(クロストーン)」に倣ったということだろう。どう考えてもこっちの方がかっこいい。
あと、今回の敵役であったフェニックスのネロは、戦いの後、いて座の黄金聖衣のペンダントを持ち去っていた。
原作からモヤモヤしていたのが、聖闘士が最初からその聖衣の聖闘士として修業を積み、例え聖闘士の中の一番階級が低い青銅聖闘士(ブロンズセイント)だったとしてもそのまま一生を終えるのか、それとも力をつけていく中で徐々にランクアップして白銀聖闘士(シルバーセイント)→黄金聖闘士(ゴールドセイント)と格を上げていくのかという点。
原作の星矢たちは必要な時にだけ黄金聖衣を使うものの、普段は青銅聖闘士のままで過ごしていた。物語の終盤では自分たちの持つ聖衣の方が「神衣(カムイ)」にバージョンアップしたりしていたが、原則ランクアップなし。
聖闘士星矢Ω」では「伝説の青銅聖闘士」の面々が黄金聖闘士となっており、ランクアップしているように見える。
もちろん原作原理主義的な考え方であればランクアップなし、周辺作品も含めればランクアップあり、ということなのだろうが、本作でも一定の解を示してほしいわけで、ネロのエピソードからはランクアップありを示唆しているようである。
「The Beginning」を謳っている以上は次回作を想定しているということで、そこで解を示してほしいものだが、今の興行成績で次作が作れるかどうか、そこが難しいところだな。個人的には応援しています!

 

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