観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

アムステルダム(2022)

Amazonプライムにおすすめされるがままに観た。「ビジネス・プロット」という1933年にアメリカで発覚した政治事件を原案に膨らませたフィクション。

第一次世界大戦時のアメリカ。医学生のバートは妻及びその父親より、地位・名誉のため半ば無理やり従軍させられるが、そこで黒人兵士たちのリーダー的存在であるハロルドと、負傷兵の体に入っていた爆弾のかけらをコレクションし、それで芸術作品を作る変態ナース・ヴァレリーと親しくなる。
バートとハロルドは、ヴァレリーの誘いでアムステルダムに行き、そこで一緒に暮らして友情を深めていくが、バートは愛する妻ベアトリスの元に帰るため、二人と別れニューヨークへ帰還する。
しかし、医師として仲間の帰還兵の面倒を見たいバートは、上流階級向けの医師をしていたベアトリス一家と反りが合わず追い出されてしまう。
バートは自分で診療所を開くが、自身も鎮痛剤の依存症になり、週から逮捕され、ハロルドとヴァレリーに助けを求める。
ハロルドはヴァレリーと別れ、一人バートを助けるためにニューヨークに向かう。
15年後、医師を続けているバートと、弁護士になったハロルドは親交を深めていたが、どちらもヴァレリーと連絡はついていなかった。
ハロルドはミーキンズ将軍の娘リズから相談を受け、バートに検死解剖を依頼する。リズは将軍の死に不審な点があると感じたのだった。
看護婦イルマの協力により将軍を解剖したバートは、その死が毒殺であったことを確認する。ハロルドとバートはリズにその結果を報告しようとするが、何者かによって路上に突き飛ばされたリズは車に轢かれて死んでしまい、さらには二人がその容疑者として警察から追われる羽目になる。
疑いを晴らそうと手掛かりを探し、資産家のトム・ヴォーズにたどり着く。二人はトムの屋敷を訪れ、そこでヴァレリーと再会する。ヴァレリーはトムの妹であり、現在は神経症を患い、トムの妻リビーに監視されているのだった。
二人はトムから「ミーキンズ将軍の戦友である英雄・ディレンベック将軍なら真相を知っているかもしれない」と助言を受ける。
ヴォーズ邸でリズを殺した男を見かけたハロルドとヴァレリーはそのあとを追うが、「五人委員会」と呼ばれる組織が運営する強制避妊手術施設にたどり着き、そこで銃撃されて逃げ、バートと合流する。
三人はディレンベック将軍と面会し、「五人委員会」から独裁者となることを要請されていることを知る。五人委員会はディレンベック将軍に自分たちの都合の良い演説をするよう求めていたが、三人はそれを逆手に取り、バートが主催する退役軍人の戦友会でディレンベック将軍が演説をすることにして五人委員会をあぶりだそうと計画する・・・

史実の方を知らないので、どこまでが本当にあった話でどこからフィクションなのか判然としないが、「グランド・ブダペスト・ホテル」を思わせる舞台的場面転換とカラフルな美術、ストーリーを細かく追わずトントンと先へ進めるリズムが特徴的で、テンポがよく、端折り過ぎかと思うほどスピーディーに進んで飽きさせない。
しかしグロい描写に容赦がないな~。解剖シーンでは内臓的なものを余すところなく映しているし、ヴァレリーの変態趣味である爆弾の破片もよい具合に血まみれ。
ラストの弾痕の描写には正直ドン引きしたが、趣味的には一貫していると言える。
また、ストーリーに関わりが薄いのでサラッと流れていくが、ベアトリスがバートの戦争で受けた傷に性的興奮を覚えるという描写もなかなか味わい深いと思った。
ヴォーズ夫妻もあくどくてエグくて、でも人間味があふれていて魅力的。しかしリビーはなんでそんなに将軍に首ったけなのであろうか。
史実を元にしていると言いつつ、そちらの話自体はあまり大事にされておらず、あくまでも三人の話を主体にしているため、ストーリーの中のディレンベック将軍のスピーチとは別に、実際の映像そっくりに撮った別バージョンがエンディングで流れている。
本作は脚本や演出に批判が集まり、興行的には大失敗だったという(そういうのをボックスオフィス・ボム、というのはこれで初めて知った)が、ガチ勢の方々からしたら「そっちじゃなくて事件の方をメインにしろよ!」ということだったのかな。
史実部分との乖離はあるにせよ、俳優陣の演技と、その人物を色濃く描いている演出がとてもよい。バート:クリスチャン・ベールはもちろん、ハロルド: ジョン・デヴィッド・ワシントンは見た瞬間に「名もなき男キター!」とワクワクしてしまった。
そしてヴァレリー: マーゴット・ロビーを見て、最初はミラ・ジョヴォヴィッチかと思いかけたのだが、イヤイヤこんなに若いはずないと思い直し、それにしても美しい女性だなぁとウットリとその所作に見とれてしまった。

綺麗でグロくてワクワクして楽しめた、よい映画であった。

アムステルダム