アマプラで観た。ネタバレ注意。
京都・貴船の老舗旅館では、いつものように客が食事を楽しんだり部屋でくつろいだりしており、仲居たちは淡々と、しかしプロ意識を高く持ちながら接客を行っていた。
仲居のミコトは仕事の合間にふと旅館裏の川のほとりで一息つき、仕事に戻るが、あることに気づく。これはさっき同じことをやった?
一緒に部屋の片づけを行っていた番頭に聞くと、彼も「同じことをして、同じ会話をした」と言う。
お互いに認識はするが、数分後に時間は繰り返す。
何度も同じことをしつつも、徐々に「時間がループしている」事実を共有する人の輪は広がっていく。女将のキミ、仲居のチノ、料理長と板前のエイジ、鍋を食べている客のノミヤとクスミ、作家先生オバタ、編集でお風呂に入っているスギヤマなど・・・
数分毎にループする時間の中で、どうやら記憶だけは保持されている。
そのため、それぞれが次のループに備えて行動を少しずつ変化させ、その結果わかったことを都度共有していく。
理系出身の板前エイジが状況をまとめ、ループの度に関係者に集合をかけながら、
・時間がループしており、その間隔はきっかり2分間であること
・ループの範囲は貴船の狭い範囲であること
・記憶は保持されているため、人間関係には注意
等を告げる。
しかし、告げた先からノミヤとクスミは大げんかを始め、オバタは部屋のものを壊したり、2階から飛び降りたりする。
そんな中、料理人見習のタクが休憩のため一室にこもっており、ループがだいぶ繰り返されてから「なにがあったの?」と出て来た。
タクはひそかにフランスへ修行しに行くことを夢見ており、イヤホンでフランス語の練習をしていたため、時間のループに気が付かなかったのだと言う。
そんなタクに恋心をいただいていたミコトは、それまで旅館全体のために行動していたのが、タクとの時間を優先し始め・・・
これもいわゆる「エンドレスエイト」の系譜。
ループ時間がたったの2分と超短時間であることと、記憶がしっかり残り、メンバー全員が理性的に受け止めて建設的な議論が最初から始まる点が新しいと思った。
主人公だけが把握しているか、もしくは一部のメンバーだけが把握していって徐々に全体へ浸透していくパターンは見たことがあるが、これは斬新。
皆、どうせ何をやってもループするよね、というあきらめの気持ちと、いやいや、これが最後で固定されるかもしれないから、という恐れの狭間で自分の行動を都度決めていくのだが、その軸をどこに置くか各人バラバラなのが面白い。
作家先生のオバタは2階にある自分の部屋から旅館の備品を川に投げ落としたり、障子を穴だらけにしたり、しまいには自分も飛び降り自〇したりしており、全て「いや、こんな時じゃないと経験できないから」という潔さで行動している。連載に行き詰っていて書くことがない気持ちの表現として、いささか過剰かなと思うが面白い。
主人公のミコトは、最初は全体最適に忠実なのだが、途中から一転して自分の恋を優先し、他の大人たちから逃げ回る。
もちろん事態を解決するため、理性的に対処しないと進展はないのだが、そんな中敢えて若い気持ちの衝動を発動させている様子がすがすがしく感じられる。
最後のオチは絵にかいたようなとってつけた感じなのだが、この話は過程が重要なので、最後はあっさりで十分。
SFとしての思考実験として面白く、ちょっとキュンとできて、さわやかな印象が残るよい映画であった。
