観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

十角館の殺人(綾辻行人 1987)

35年前に読んだが、一番大きなトリック以外ほとんど忘れてしまっていたので再読。ネタバレ注意。

1986年、大分県K**大学の推理小説研究会のメンバーが、角島(つのしま)という孤島にやってきた。
ここは過去に、建築家・中村青司とその妻、および使用人の北村夫妻が、焼け落ちた中村邸「青屋敷」で見つかるという陰惨な事件があった跡地があり、その離れである「十角館」で合宿をするためである。
メンバーたちはお互いを著名な欧米のミステリ作家の名前にちなんだあだ名で呼び合っている。
医学部4回生で口ひげを生やしたポゥ、法学部3回生で捻くれた性格のカー、法学部3回生で金縁眼鏡、会誌「死人島」編集長のエラリイ、理学部3回生で不動産業の叔父がこの島を購入したヴァン、薬学部3回生でソバージュ女性のアガサ、文学部2回生で引っ込み思案なオルツィ、文学部2回生で小柄で眼鏡、童顔のルルウ。
一方、本土では、推理小説研究会及びその関係者宛に、かつて会に所属していて酒宴で事故死した中村千織について、殺されたと告発する怪文書が届いていた。
元研究会員の江南孝明は、彼女の親族である中村紅次郎を訪ねていく。そこにいた紅次郎の大学の後輩・島田潔と一緒に事件を解明しようと、今回の度には参加しなかった研究会のメンバーで江南の友人、守須恭一に話を聞く。
島では楽しい合宿がスタートしたかに見えたが、3日目の朝、メンバーの一人が殺される。ドアには「第一の被害者」というプレートが貼り付けられており、メンバーたちは自分たちの中に犯人がいるのではと疑心暗鬼になる。
そしてこれはこのあとに続く連続殺人の始まりに過ぎなかった・・・

学生の頃も今もミステリはあまり読まないが、周りに好きな人が多かったので、名作だけを選んで薦めてもらったのはとても幸運だった。本作もそのうちの一作。
しかし、思い出した思い出した。この大学サークル特有のアイタタタな感じ。
僕も大学の自分、似たようなサークルに入っていたので、イタいあだ名をつけて、スノッブっぽいことを言ってかっこつけている様子が、自分のことを言われているようでひたすら同族嫌悪で恥ずかしく、羞恥心が励起されていたたまれなくなる。
もちろん作者がそれを想定して書いているのは間違いなく、なんということをしてくれたのだ、オタクサークルへの偏見がより高まってしまうではないか、と当時思ったものだ。
ストーリー自体は、島と本土がパラレルで進行していく複雑な構成であるにもかかわらず読みやすく、きちんとわかりやすい事実確認が行われながら進んでいく。
メンバーたちが動揺して憔悴していく様と、残酷にも繰り返される殺人、少しずつ明らかになる本土での調査による過去の事実が折り重なり、最後の犯人の独白で一気に伏線が回収されるテンポが素晴らしい。
ただ、ミステリで連続殺人ものを久々に読んだおかげで、「こんなにポンポン人って殺せるんだっけ?」と改めて思ってしまった。
作中冒頭で語られている通り、ミステリは純粋な知的ゲームであり、殺人はそのシチュエーションにすぎないが、殺し屋稼業でもしていない限り、一人殺しただけでメンタルがやられて使い物にならなくなりそう。
それだけ犯人に強いモチベーションがある、という前提で理解しよう。
巻末の鮎川哲也の解説で「吹雪の山荘」の説明を読んで、「そして誰もいなくなった」(クリスティ)は読んでいたので。そういえばあったなぁと思い出した。
これはいろいろなドラマやアニメなどでも使われており、そちらですっかりなじんでいたが、言われてみれば本格物のパターンであった。
本作は日本の新本格ミステリの嚆矢と言われており、その栄誉にふさわしい堂々たるトリックとストーリー。読むのは2回目だが新鮮に面白かった。記憶力がないと楽しみが増えていいなぁ。
作中出てくる探偵役の一人、島田潔の出番があっさりしているなあと思ったら、このあと続く「館」シリーズを通した探偵役だったか。他の「館」シリーズは読んだことが一度もないので、いずれ読んでみたい。