バカリズム原作×脚本×主演のドラマ。バカリズムがOLのふりをして連載していたブログの映像化。以前から気になっていたが、Huluで見つけ一気に視聴。
私(バカリズム)は銀行に勤める26歳のOL。仕事はそれなりに厳しく、社会人として日々の業務をこなしているが、日常生活では少々ずぼら。職場で同期の真紀ちゃん(夏帆)や後輩の紗英ちゃん(佐藤玲)、先輩の小峰さん(臼田あさ美)・酒木さん(山田真歩)らと、仕事や上司のの愚痴をこぼし、仕事帰りにご飯を食べに行き、充電コンセントの取り合いをし、メイク用品で盛り上がる。
大きな事件やストーリーは特にない。淡々と日常が綴られるだけ。
銀行の事務や受付の仕事は知識や経験を要求され、みなそれぞれがプロフェッショナルでありつつ、女子更衣室ではOLたちが友情を深めるため、およびストレスを発散するためにおしゃべりし、さりげないなにげない会話の中でもお互いを気遣い、認め合っている。
それぞれのエピソードがいかにも「ありそう」で、スペシャルなことではなく、日本全国津々浦々の女子更衣室ではこれと同様のことが起きているのであろうと思わせる。
おっさん目線で見ると、男性がいかにコミュニケーション下手であるか思い知らされる。女性たちは細やかな気づかいや親愛の情を、こうした日常会話の中に忍ばせて当たり前のようにやりとりしているが、おっさんにはそれがなかなかできない・・・と書くと語弊があり、できる人もいるのだとはと思うが、僕を含め身の回りのおっさんたちは自慢と説教と昔話が大好きで、お互いに微妙に傷つけあって黙り込み、友達をなくしていくのが常である。
これが「おっさん」であるバカリズムによって書かれた脚本というのがすごい。付き合っていたOLや知り合いの話を元に膨らませて、友達にウケるためにブログを書いた、とインタビューで答えているが、とても高度な知的遊戯であり、感心するしかない。
脚本だけでもすごいのに、さらにドラマではOLの一員として、おっさん然としたバカリズムが紛れ込んでいるのが、本人も言っているがクレイジーである。
世のOLはこうしたやりとりをしているんだなぁという異文化体験をすると同時に、まるでおっさんでもOLの一員になれるかのような錯覚を起こさせてくれるという、2つの側面を同時に味わいながらドラマを観る不思議な感覚を味わった。おっさんからするとありがたい話ではあるが、OL側からすればキモいんだろうな。そう思われることを含めクレイジーというわけだ。
そのような感覚は幻想であることをはっきり明言するために、ドラマでも映画でもラストではある趣向が凝らされる。ちゃんと落とし前を付けているのが潔い。
劇場版も続けて観たが、映画だから特別なことが起こるということは全くなく、ドラマの延長にある日常が綴られている。それがいいんだよね。