日本映画史上最も高評価を受けている伝説の映画。この年末年始のBS名画放映で初めて観た。ネタバレ注意。
戦国時代末期、とある農村に野伏せり(野武士)がやってくるとの情報が入り、村民たちは憂慮する。
村の若者・利吉は戦うべきだと息を荒くするが、年配者たちは争っても無駄と最初から諦めており、村を重い空気が覆う。
村の長老に相談したところ、「この村に金はないが、米だけなら食わせられる」と、米を食べることだけを条件に侍を招聘するようにとのこと。
利吉たちは街で浪人たちに声をかけるが、そのような条件では誰も相手にしない。
ある日、村に入った強盗を、その場に居合わせた浪人・勘兵衛が機転と勇気で退治した。利吉は勘兵衛に村の窮地を説明し懇願するが、それは無理だと断られる。
しかし、街の人足達から百姓たちの苦しみを詰られて翻意し、村を救うことを決意する。
勘兵衛は街で一緒に戦ってくれる侍がおよそ7人必要として、浪人を集める。
勘兵衛の人柄に惹かれたという五郎兵衛。
勘兵衛のかつての相棒七郎次。
薪割り流を嗜むと自称するふざけ屋の平八。
剣術に秀でた久蔵。
強盗への対処を見て勘兵衛に憧れ弟子入りを志願した、若い半人前の勝四郎も、利吉の願いに寄り6人目の侍として数えられる。
そして、勝四郎と同じく勘兵衛に憧れを抱きながら、その思いをどう表現したらいいかわからない粗暴な若者、菊千代も勝手についてくる。
勘兵衛たちは村に赴く。
最初は侍を恐れた村民に歓迎されなかったものの、菊千代の機転により、侍が必要とされていることが分かり、その手柄を持って菊千代は7人目の侍となる。
村を防御するための様々な対策や訓練、調査を行っている際、勝四郎は山の中で、侍に奪われることを恐れた父・万造により断髪した若い娘・志乃と出会い惹かれあう。
様々な対応策を講じ、準備も完了して、このまま野伏せりはこないのではないか、皆がそう思い始めた時、彼らはやってきた・・・
207分という相当な長さの映画なのだが、ストーリー展開はコンパクトでダイジェストを見ているかのように次々とエピソードが繰り広げられる。
長回しでじっくり絵を撮りたいと思われるところもかなりあっさりしているが、細かいカット割りと対象に密着したカメラワークで必要最低限の尺だけ映像にしている。
そのため最初から最後まで息つく暇がなく、クライマックス的なワクワクが最初から最後まで続き、裏切られることがない。
観れば観るほど「これはすごい映画だ」という気持ちが湧き立つ。
また、それぞれのキャラの粒立ち度がすごい。勘兵衛を始めとする7人の侍たちそれぞれが個性的だし、村民側の利吉や万造、長老などもいい味を出している。
主役的な立ち位置にいるのは勘兵衛(志村喬)で、侍たちのリーダーであり戦術家であり手練れの戦い巧者なので文句なし。
同じ主役級として位置づけられているのが菊千代(三船敏郎)。正統派な主役ではなく、狂言回し的な立ち位置なのだが、粗暴な男の成長譚としても観ることができるのと、やはり三船敏郎の凄みのあるイケメンオーラの圧がものすごい。
凄腕の剣客・久蔵(宮口精二)のカッコよさがまた格別で、寡黙ながら着々と敵を倒して成果を上げ、驕るでもなく黙して語らない。本作が海外で人気を誇り、みな侍になりたいと言っているのはおそらくこの久蔵リスペクトだろう。そりゃ憧れるよ、かっこいいもの。
半人前の侍、勝四郎(木村功)がちゃんと後半でキャラ立ちしていて、決戦前夜のワンエピソードになっているのも味わい深い。
若い村人・利吉(土屋嘉男)に隠された悲哀も見逃せない。彼が野伏せりを強く憎むのは理由があることがしっかり描かれる。
そして、最後の野武士と侍・村民たちの戦いの迫力がすごい。馬を狭い範囲でぐるぐる操っている野武士に対して、至近距離から竹槍で襲い掛かる村民たちの距離がものすごく近いので、俳優およびカメラ関係者が蹴られて死にそうで観ていてハラハラする。また、時代劇と言えばチャンバラだが、ああいう様式美は一切なく、刀は重い鉄の棒であり相手を殴るものであり、うまくいけば斬れることもある武器で、数を頼んだ竹槍の方が実用的というところにリアリティを感じる。
すごかった。確かに名作でした。