観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

敦煌(1989)

BSのレターボックス版で放映していたのでなんとなく観た。ネタバレ注意。

10世紀、北宋にて、科挙を受験した若者・趙行徳(佐藤浩市)は、試験で「西夏対策を論ぜよ」と問われ、答えられずに落ちてしまう。次の科挙は3年後であり、モチベーションは下がる一方であった。
そんな中、西夏出身という女性(三田佳子)に出会い、西に向かう行商について旅をする。しかし西夏漢人部隊にとらえられ、半ば無理やり兵士の一員とさせられてしまった。
西夏ウイグルと戦争を行った中で、趙行徳はウイグルの王女・ツルピア(中川安奈)と出会い恋に落ちてしまう。しかしそんな二人を引き裂くかのように、漢人部隊の隊長・朱王礼(西田敏行)は趙行徳に対して「西夏の首都へ留学へ行け」と命ずる。1年で戻るとツルピアを朱王礼に託し、趙行徳は旅立つ。
しかし、西夏では領土拡大のための戦略として西夏文字の普及を行っており、趙行徳は容易に帰ることはできなかった。約束の帰還を大幅に超過して趙行徳が戻った時には、ツルピアは西夏の皇太子・李元昊渡瀬恒彦)に、ウイグル攻略の糸口として見染められ、政略結婚させられることになっていた。
ツルピアは結婚すると見せかけ、式の途中で李元昊にナイフで襲い掛かり、失敗すると身投げをして自死してしまう。
趙行徳は愛するツルピアが目の前で死んだことで自暴自棄になり、敵へ突っ込み半死半生となったが、朱王礼は彼を敦煌へ赴かせ、そこで落ち合う約束をする。
それはいずれ行う李元昊への造反のためであった。
趙行徳は敦煌が東西の交易の要所であり、様々な文化の蓄積がなされていることに改めて気づかされるのであった。
そして、文化都市・敦煌を舞台にした戦いが始まろうとしていた・・・

原作は井上靖の同名小説。読んでいないので詳しくはわからないが、映画の筋だけに限って言うと、だいぶ行き当たりばったりというか、趙行徳も朱王礼も、だいぶ曖昧模糊としたなんとなくな感情だけで行動しているように見えてしまうのだが、まあこの話は敦煌で匿われていた文化遺産が日の目を見たことから想起された歴史ロマンなので、一人一人の事情などは些細なことである。
80年代とは思えない雄大・壮大な砂漠の光景が余すことなく映像化されていて、非常に見ごたえがある。
本作は日本アカデミー賞で7つの賞を取っているらしいのだが、最優秀主演男優賞が朱王礼の西田敏行なのはなぜ?主演じゃないよね。助演男優賞ならわかるが。
もしかして触れてはいけない話なのかな?怖いなぁ。

Wikiを見ると、これを映像化した徳間康快たちの長年にわたる製作背景もまたとても面白い。様々な関係者がこの作品の映像化に心を砕き、挫折し、奔走している。
中国当局の許可も難関で、手を尽くした結果、日中合作の形で何とかおさまったようだ。
ただ、製作費は中国当局に中間搾取され、撮影機材は「日中友好」の名の下に、全て接収されたそうな。ひぇ~。

機会があれば原作も読んでみようと思う。