観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

音叉(2018 高見澤俊彦)

THE ALFEE 高見沢俊彦の処女小説。「特撮家族」が面白かったので読んでみた。

雅彦は親元から東京の大学に通いながら、グッド・スメルというダサい名前のバンドを組んでおり、デビューの話が持ち上がっていた。
カッとなりやすく、でもいい加減な雅彦の性格もあり、デビューの話はなかなかまとまらないが、仲の良い友人でもあるバンドメンバーと、若者らしく体当たりの付き合いを行う中で絆を深めあう。
そして、雅彦を取り巻くクラスメートや憧れの先輩など、女性たちにも大いに翻弄されながらも、自分がやりたいことは何なのかを模索する雅彦。
そんな中、バンドの存続を揺るがす事件が起こるのだった・・・

タカミーはだいぶ文学青年だったと聞いたことがあるが、その割には難しい言い回しや語彙などは一切使用せず、平易で素朴な文章を綴っているのが意外だった。
処女作にはその作家の本質全てが出ると言われるが、ハードロック、学生運動、バンド活動など、THE ALFEEの作品にも影響を与えたエッセンスが素直に凝縮されているのが興味深い。

しかし、村上春樹ばりにもてまくってんな雅彦は。実際のタカミー自体もそうだったのだろうか。細面の美形だったからなぁ。おそらくモテていたに違いない。
現れては消えていく女性たちに儚さを求めているきらいもあるが、文体が「青春デンデケデケデケ」っぽいこともあり、あまり悲壮感はなく、なんだかんだと不平不満を言い散らかしながらも結構楽しくやっている様子が微笑ましくもある。

タイトルが仰々しかったので、どんな悲壮感漂う話が来るのかと構えていたら、今読んでも楽しい「昔の青春時代」であった。