観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

特撮家族(2023 高見澤俊彦)

THE ALFEE高見沢俊彦が書いた3作目の小説。小説作者の場合は「澤」なのね。

THE ALFEEは中学生の頃から好きでずっと聞いていたが、最近は最新の音楽をチェックすること自体が億劫になり、彼らのCDも2~3年ごとに気がついた時まとめて買うくらいのペースになっている。
そんな中、たまたま何かの動画を観ていたところ、最近小説を出したとのタカミー発言があり、「え?」と思って調べてみたら、もう小説を2作も上梓しており、本作が3作目とのこと。知らなかった。
更に作品名に「特撮」が含まれており、特撮ファンの端くれとしては読まざるを得ない、ということで読んでみた。

銀行勤めをしている美咲は歴女で戦国武将好き。合コンで知り合ったイケメンが同じく戦国武将好きと聞いて運命の出会いを感じている。
そんな中、神道研究者で特撮怪獣マニアの父親が突然亡くなった。特撮好きでテレビプロデューサーの兄と、ウルトラマン好きで美容師の妹はそれぞれお金に困っており、父の残した遺産を相続したいと美咲に迫る。
そして亡くなった父親が突然美咲に話しかけてきて・・・

起きている出来事自体はそれぞれそんな大したことがないエピソードなのだが、ストーリーのテンポがよいのと、登場人物たちが不器用ながら血肉を備えた人間味あふれるキャラ設定になっていて、読み進めるのが苦にならない。
特撮や神道のエピソードはちょっと中途半端かなという感じも否めないのだが、こういうストーリーが書きたいという強い意志でぐいぐいと話が綴られており、その中に織り込まれた素材として十分に光っているので、それで十分という気もする。
ラストは思った以上にスケールの大きななオチというか伏線回収というか、神道主軸の壮大なイメージが広がるのだが、ベースにあるのはホームコメディなのでそんなに深刻さもなく、うまく物語が畳まれていた。

粗削りな文章で、ところどころ表現的に素人くさい言い回しがあるのに、読後感はスッキリ。
たしかにタカミーな感じがする(笑)。
THE ALFEEの曲にも通ずるものがあるが、器用・綺麗に立ち回ろうとしなくていい、不器用でかっこ悪くてもそのままでいい、という気にさせられ、本作もそのエッセンスというか魂というか、そういうものが感じられてよかった。
もちろん作者が高見沢俊彦だからとか、THE ALFEEの人だからとか、そういう予備情報込みでホッコリしているわけだが、楽しく読めたのでよし。