観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

秘める恋、守る愛(2019 高見澤俊彦)

THE ALFEE 高見沢俊彦の小説2作目。

ミュンヘンを訪れた夫婦、直樹と有希恵。ドイツに留学している二人の娘・一恵を日本へ帰るよう説得するという目的だったが、直樹は若き頃にこの地へ留学しており、ドイツ人のアンナと恋に落ちた思い出に囚われていた。一方、有希恵は仕事にのめり込む夫に物足りなさと寂しさを感じ、心の隙間を埋めるべく不倫に走っていた。そして一恵もまた、両親には打ち明けられぬ秘密を抱えていた・・・

と書くと儚く脆い恋物語が展開するような気がしてしまうが、それぞれ心に傷は抱えていたとしても、あまり拗らせた人は出てこず、基本、根は素直な人たちばかりなので、ストーリーがあまり捻じれずにストレートに進んでいくのがちょっと面白い。
もうちょっとすれ違ったり仲たがいしたりと交差する人間模様に憧れてこの小説を書いているようにも見えるのだが、みな「話が早い!」と突っ込みたくなるくらい理解が早く、お話もすっきりとした落着で終わることから、タカミー自体が素直な人なのだろうなぁと思わせる。
あと、タカミーは結婚してないし子供もいない(はず)ので、この夫婦の機微的なものや親子のお互いを思う気持ちは一所懸命想像して描いたということになる。楽曲のファン的にはかなりほっこりするポイント。
ただ、一番主人公っぽい直樹は、会社で成功した割には一途でやさしく純粋すぎな気はする。こんなに理解力と包容力がある人は出世できないのでは。偉くなる人は基本ワガママで利己的でしたたかなんだよ、と会社勤めをする身としては強く思うのだが、これはサラリーマンの僻みが入っているかもしれない。

あと、タカミーはドイツほんとに好きなんだなぁ。この本の3分の1くらいは観光案内になってるくらい。文庫版のあとがきに、お兄さんの赴任先ということで若いころからよくドイツに行っていたとあったが、「Freedom on The Other Side of The Wall(壁の向こうのFreedom)」をはじめとして、ドイツをモチーフにした歌(しかもかなりストレートな歌詞)が印象的なTHE ALFEEだけにわかりやすい。

正直旅行先としてはヨーロッパはほとんど興味がなかったのだが、この小説を読んだらノイシュバンシュタイン城あたりは行ってみたくなった。