観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

スパルタンX(1984)

当時映画館で観て、テレビ放映されるたびに観ている映画。たまたまBSでやっていたのでまた観てしまった。

スペイン・バルセロナで移動車による軽食屋を営んでいる中国人のトーマス(ジャッキー・チェン)とデヴィッド(ユン・ピョウ)。二人はパン屋の2階に下宿しており、ワゴンを改造した調理場兼屋台の「スパルタン号」で日々商売に精を出している。
心を病み精神病院に入院しているデヴィッドの父をお見舞いに訪れた二人。
デヴィッドの父はそこで知り合った女性・グロリアと恋に落ちており、会いに来た二人にグロリアを紹介する。その傍らにいるグロリアの娘・シルヴィア(ローラ・フォルネル)の美しさに二人は一目ぼれする。
しかし、夜の広場で商売をしていた二人は、娼婦として街角に立つシルヴィアを発見してしまう。シルヴィアは客から財布を摺り、二人の車へ逃げ込んできたのだった。
彼女を下宿に連れてきた二人は、怪しみながらもソファを提供して一晩泊めるが、まとまったお金はすべて盗まれていた。
シルヴィアを探し出した二人はなぜ盗みをするのかと問いただしたところ、彼女はグロリアが数年前から心を病み病院へ入ってしまったことで、生きるために何でもやってきたと話す。彼女の更生を手伝うため、二人は屋台の商売に彼女を雇い入れることにした。
太った中国人モビー(サモ・ハン・キンポー)は探偵見習だが、借金取りに追われ逃げ出した所長に代わり、探偵社を引き継ぐことになった。そこへ訪れた人探しの依頼人に応じ仕事を開始する。モビーが探しているのはグロリアとシルヴィアであった。
実はシルヴィアは伯爵の娘で、伯爵は死ぬ前にグロリアとその子に遺産を残すと遺言したが、2週間以内に弁護士の元へ出頭しなければ権利を失う。それを狙った伯爵の弟である現伯爵がグロリアとシルヴィアを拉致し出頭させないように企んでおり、二人は伯爵の手のものに攫われてしまう。三人はシルヴィアたちを救出するため、伯爵の城へ潜入するのだった。

感受性の黄金期である中学生時代にスクリーンで観た映画なので、観るたびに当時のワクワク感がよみがえってきて感慨深い。客観的にこの映画がよくできているかどうかはどうでもよく、ただただ主観的に最高に楽しくて面白い、人生ベスト3に入る作品。
オープニングで二人のモーニングルーティンから始まるが、そこからもう面白い。ちょいちょい笑い(ドアが二つある二人のそれぞれの部屋は実は間に壁がないとか、ジャッキーが木人を相手に型を1回しか決めないとか)を挟みつつ、準備運動としての二人の組手は素晴らしく、しなやかでありながら力強く、このあとの話への期待を膨らませる。
スパルタン号を屋台車として変形させるためのギミックが無駄に凝っていて楽しい。懐かしのグリーンディスプレイでワイヤーフレームで描かれる変形がかっこいい。むしろ実車の変形がいかにも手動で野暮ったく見え、それもまたよい。
バルセロナの街並みの中で二人のカンフーが冴える。異国の地であっても強くいられるというのが頼もしく、なんか嬉しい。
ジャッキー映画におけるド派手なカーアクションをこの作品で初めて観たかもしれない。高速道路の上空を飛び、大量のオレンジが詰まったトラックの中に飛び込む三菱のワゴン。ふつう無事では済まないわけだが、これをワンシーンで終わらせてさっさと次に行く潔さが素晴らしい。
しかし何と言っても注目すべきは終盤の戦いにおける、ジャッキー・チェンと、敵のギャングの一人ベニー・ユキーデとの格闘であろう。
ベニー・ユキーデはアメリカンキックボクシング(当時はマーシャルアーツと呼んでいた)の実戦経験豊富な格闘家であり、ド素人の中学生が見ても他と全然違うのが一目瞭然なくらい迫力があった。現在に至るまで、素手の格闘シーンでこれ以上のものを観たことがない。実際ジャッキー・チェンも自分の歴代のベストファイトとしてこのシーンをあげているとのこと。
当時のカンフー映画ではサモ・ハン・キンポージャッキー・チェン、ユン・ピョウが有名で人気があったが、「プロジェクトA」で三人が主演級の共演を果たして、ファンは大いに沸き、その面白さに歓喜したのをなんとなく覚えている。本作はプロジェクトA後の三人共演作品で、前作ではクールで冷たい印象の役だったユン・ピョウがお人好しでちょっとだらしなくて、でも強いという役柄を演じたのがとても好印象だった。
(あれ?「五福星」も三人共演だったっけ?と思ってwikiを見たら、「五福星」ではサモ・ハンとジャッキーがメインで出ており、ユン・ピョウは出ていたが端役だった。日本での公開は「プロジェクトA」「五福星」「スパルタンX」の順で、全て1984年に公開された)
映画は字幕で観たが、その後のテレビ放映は吹替版で観た。吹き替え版は2種類あるようだが、ジャッキー・チェン石丸博也、ユン・ピョウ=古谷徹サモ・ハン・キン・ポー=水島裕は共通。ユン・ピョウはあまり日本のテレビでの放映が多くなくそんなに印象は残ってないが、ジャッキーの石丸博也サモ・ハン水島裕は、むしろこっちの声が本物なんじゃないかと思うくらい頭に刷り込まれており、懐かしさしかない。

今回観てみて、シルヴィアの美人さ加減が改めて心に沁み渡った。昔はただ美人だと思っていたが、若い頃にしかないたおやかな美が含まれていることを、おっさんになるとしみじみ感じる。
そして今更だが、グロリアと恋に落ちたデヴィッドの父ちゃんは、そのまま順調に結婚したらグロリアの相続した遺産で悠々自適であり、デヴィッドは屋台で働かなくてもいいんじゃないか、とふと思ったが、まあ、野暮だあね。
あと、当時ファミコンゲーム「スパルタンX」を友達の家でプレイした記憶をうっすらだが思い出した。あれも楽しかったな~。