観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

とり眼ひとの眼(1989)とり・みき

漫画家とり・みきのエッセイ集。

エッセイ集と言いつつ、この本のかなりの割合が原田知世で占められている。

当時、とり・みきを含む若手SF業界の関係者の間で、「時をかける少女」という大林宜彦監督作品がめちゃくちゃ流行った時期があり、彼らはみな原田知世の美しさに酔いしれ、全員プロなのに非売品の同人誌を作ってしまうほどだったとか。

本エッセイの前半では、「天国に一番近い島」という原田知世・大林宜彦コンビの次作の撮影の様子を綴っている。

といってもスタッフとして同行したというよりは、たまたま休みが取れてSF仲間とどこかバカンスでも行きたいねと話していた際、「どうも知世が映画の撮影でニューカレドニアに行くらしい」という話を聞いて、迷惑だとわかってはいるが、でもやっぱり行っちゃおうということで、自分たちもニューカレドニアに行くということにした、その旅行記となる。

厳密にはとり・みきはその後映画の中で使用される壁画を公式に依頼されることになるので、スタッフと言えばスタッフと言えなくもない立場に昇格したのだが、さらにそれが縁で、とり・みきを含む4人は映画のエキストラとして出演することになったのであった。そのメンバーは、河森正治超時空要塞マクロスの監督)と出渕裕戦隊ものの怪人やロボットアニメのデザイナー)と、アニメの進行をやっている益子氏。

撮影の様子、エキストラ、役者の方々との交流、ニューカレドニアの気候風土や歴史の紹介、彼ら4人の旅や壁画の話などがテンポよく配分よくまとめられており、独特のギャグがちりばめられた巧みな文体は何度読んでも飽きない。

正直、この人のギャグマンガはあまり面白いと思ったことがないのだが、エッセイは筆致が冴え渡る名編が多い。

エッセイ漫画「愛のさかあがり」は面白かったが(近いうちにここでも取り上げよう)・・・ノンフィクションの方が肌に合う感じ。