観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

さかなのこ(2022)

ほぼ前情報なしにアマプラで観た。ネタバレ注意。といってもほぼさかなクンの半生だが・・・

魚が大好きな小学生ミー坊は、毎日魚のことばかりを考え、水族館に行き、魚の絵を描き、魚を食べている。
理解のある母、なんとか理解しようとする父、ほぼ諦めている兄に囲まれ、ミー坊は今日も魚だらけの一日を送る。
学校の友達もそんなマイペースなミー坊に呆れながら、その一途な思いを実は評価している。
ある日、学校の帰りに不審な男性がいた。彼はハコフグの帽子をかぶり、怪しいロングコートを着た、小学生からすると見るからに危なそうな男であったが、彼は魚好きであり、ミー坊と意気投合する。
男に誘われてミー坊は彼の家に行き、水槽だらけの部屋で魚を観たり絵を描いたりと至福の時間を過ごすが、いつの間にか夜9時を回っており、ミー坊の父に通報される事態となり、いつしか男の家は売りに出されているのであった。
高校生となり、ミー坊は変わらず魚好きの毎日を送っている。総長を始めとする不良たちともいつの間にか仲良くなり、カブトガニの孵卵に成功する。
高校を卒業し、様々な魚関係の仕事に就くが、魚のことだけを考えていると仕事がうまくいかず、どの仕事も長く続かない。
しかし、友人たちとの関わりの中で、ミー坊の魚好きに光明が差し始め・・・

主人公はどちらかというと男性よりの性別不明扱いだが、主演が「のん」なのでだいぶ女性寄りの中性的。
今の時代では、性別がどちらだとしても、小学生はおっさんの家に一人で行っちゃいかんわけだが、当時(さかなクンが1970年代生まれなので、40年くらい前)はまあこんなこともあるだろう、という感じだったな。
最初はさかなクンの半生を忠実に描こうとしているのかと思っていたが、「のん」によってだいぶフィクション色が強まるというか、ファンタジー寄りに見える。彼女の演技に引き込まれてしまうのだが、その背後に中年真っただ中のおっさんであるところのさかなクンが見え隠れし、さらには本人が怪しい男役で登場してしまったりするので、脳が混乱する。それが「ファンタジー」と感じるのかな。
正直、見ていてだいぶイライラする。というのもミー坊があまりにもマイペースで空気を読まないので、「そんなんじゃ世間の荒波を渡っていけないだろ」と突っ込みたくなってしまうからである。
ただ、これは誰もが自分の中に持っている不器用さの象徴として描かれているのであろう。イライラは同族嫌悪だったか・・・
こうして見て思うのは、やはり人間は要領がよくてすいすい切り抜けられるだけでは面白くない。「人間味がある」というのは、不器用さを背景に持つ生きにくさや生きづらさであり、それでもなお生きようと前を向く人に共感することを言うのだろうなぁ。小並感だけど。
あと、なんとなく仲良くしていたように見えた友人たち(柳楽優弥・磯村優斗・岡山天音夏帆などなど)が、それぞれの人生を生きており、それぞれがミー坊と交錯して、人生のターニングポイントになっていくあたりは見ごたえがあり、美しい伏線回収だった。
ということでホッコリしながら観進めていたのだが、観終わった後ググってみたら、かなりの部分が実際のさかなクンの本物エピソードだったことにびっくりした。全然ファンタジーじゃないやんけ!
一番ファンタジーだったのは本当のさかなクンだったというオチ。さすがでございます。