観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

シン・仮面ライダー(2023)

庵野秀明監督の劇場版を観てきた。

物語は唐突に始まる。
山中の峠道で、タンデム(二人乗り)のオートバイがトラック2台に猛スピードで終われている。運転しているのは本郷猛、後ろに乗っているのは緑川ルリ子。彼らはショッカーの構成員だったが、それを裏切り逃亡、本郷はバッタオーグへ姿を変えて追手と交戦し、ルリ子を救出、山中の隠れ家へ身を潜ませる。
そこへ現れたルリ子の父・緑川弘は、本郷が自らの開発した昆虫と人間のオーグ面テーションプロジェクトの最高傑作であることを告げるが、ショッカーのクモオーグが現れ殺害され、ルリ子は攫われる。
本郷はこれを追い、「仮面ライダー」を名乗って戦い勝利する。
ルリ子の案内により第二の隠れ家へ訪れた二人の前に、政府・情報機関の男二人が待ち構えていた。彼らとの交渉により庇護を受けることを承知した本郷とルリ子は、ショッカーのオーグたちとの戦いに身を投じることになる・・・

しょっぱなのカーチェイスからド迫力の映像がてんこ盛り。通常の劇場版で観たが、これだったらIMAXか4DXで観てもよかったかも。
また、ライダーに倒されたショッカーの下っ端構成員の方々は、ド派手な血しぶきを飛ばして死亡する。レーティングがPG12なのもうなずける。
特徴的なのは戦いのシーンで、通常東映仮面ライダーの戦闘シーンはスーツアクターの演技+CGが多く、そのテンポはスーツアクター次第なのだが、本作はかなりの割合をCGに振り切ってしまうことで、劇画調でテンポのいい超高速戦闘を実現させている。
早すぎて逆にユーモラスにも見えるのだが、ユーモラスであるがゆえに薄気味悪くもあり、それが演出の真意であるようにも見えた。
1号ライダーの本郷は「変身」をほとんど言わないのだが、2号やほかの方々は割と気軽に「変身」を発声する。個人的には「変身」好きなので、もっといっぱい言ってほしかったなぁ。

ストーリー上、緑川ルリ子が物語を先導していく形となっており、本郷は最初それに従って、のちに自らの意思でショッカーと戦うようになる。この頼りなげな感じを主演の池松壮亮が好演しており、いいキャスティングだなぁと思った。
逆に飄々として何でも気軽に乗り切っていく一文字隼人もよかった。
従来のシリーズでは漠然と悪の秘密結社としてショッカーが描かれていたが(緻密な設定があったのかもしれないが覚えていない)、本作ではきっちりと理由付けがされている。オーグが変身できる理由もそこに紐づけられていて、「ベルトに受ける風の力で風車が回り変身できるのだ」的なテレビシリーズのナレーションに「そんな小さいパワーで何で変身できるのか」と疑問を抱いていた洟垂れ坊主に対する回答がきちんと提示されているのはありがたかった。
まだ上映中なので詳細は省略するが、ハビタットときたか。おっさんからすると90年代に富士通がやっていたオンラインサービスを思い浮かべてしまうが、やはりアレからとったのだろうか。
あと、ロケ地が聖地巡礼の様相を呈していてワクワクした。と言っても個人的に理解できるのは平成ライダーの有名なロケ地だけで、おそらくそれも昭和ライダーのロケ地をオマージュ的に使用しているケースもあるかもしれず、孫オマージュに相当するところもあるのかもしれないが、それでも「ここは剣(ブレイド)で観た!」みたいな個所がいくつもあって嬉しかった。

興行収入的には苦戦しているという話も聞くが、画面が全体的に暗くて地味なので、そんなに興味がない方々からすると肩透かし感があるかもしれない。まあでも、よくできていたと思う。

www.shin-kamen-rider.jp

ペリフェラル ~接続された未来~(2022)

AMAZON ORIGINALの連続ドラマ。若い頃に読んでいたサイバーパンクのSF作家、ウイリアム・ギブスンが2014年と比較的最近に書いた短編が原作と聞いて興味が引かれ、観てみた。第一シーズンと思われる8話までを観終わったので書く。ネタバレあり。

今よりももう少し近未来、ネット接続や戦争に使われる技術など、様々なことが今よりも進歩している時代で、アパラチア山脈のふもとで冴えない人生を送っている若い女性フリンは、そのゲームの腕を買われて、兄・バートンからとある発売間瀬の製品のテストプレイを依頼される。それは完全なVRで行われるゲームで、まるで自分の体が別の現実の中に入ってしまったかのようなリアリティだった。
その世界でゲームをプレイしていると思っていたフリンは、ストーリー上トラブルに巻き込まれるも、無事に現実世界へ戻ってこれたことで、それが単なるゲームであると錯覚していた。しかし、ゲームの中の出来事はある意味で現実であり、フリンたちの世界に影響を及ぼし始めていく。
まず、謎の軍隊が闇に紛れてフリンの家を強襲する。しかしバートンとその友人たちは元海兵隊員で、手首に仲間と交信できるハプティック・ネットワークのインプラントを埋め込まれており、その後遺症で苦しみながらもバートンのバスキャビンに集い酒盛りをするのが日課になっており、すぐに戦闘態勢になり、隠してあった銃器をフル活用して返り討ちに成功する。
ゲーム内で情報収集するうちに、ゲームの世界は70年後の現実世界であり、量子トンネルで過去と未来をつなぎ、フリンがVRと思っていたのはペリフェラルと呼ばれるアンドロイドに過去の意識を投影している状態であることがわかる。未来世界ではとある理由で人口が激減しており、過去に干渉することでそれを回避しようともくろんでいたが、そのためにフリンたちの世界は滅ぼされようとしてた。
それに抗おうと、フリンとバートン、そしてバートンの戦友で、戦争で左手と両足を失ったコナーは、未来世界の協力者にペリフェラルを用意させて乗り込んでいく・・・

非常に刺激的な世界観とガジェットの数々で、さすがAMAZONが金をかけているだけあって精緻且つ大胆な映像に圧倒され、SFってこれじゃないとなぁと思わされる。
ストーリーもめまぐるしく進行し、映像をたっぷり見せたい場面以外はテンポよく進むので飽きさせない。
ペリフェラルの描写は特に面白いと思った。顔の表情をCG的に無機質に見せるのと同時に、役者が素体的に意識のないペリフェラルを無表情で演じているのも興味深かった。
バートンたちがインプラントされているデバイスもありそうでなかなかない。というか、この人たち退役しているはずなのに、なんで今でもその機能が使えているのだろうか。退役の時に切除されたり機能停止されたりするよね? 犯罪に使われたらどうするんだろう? 実際この話の中ではどこの誰ともつかない人をバンバン打ち殺してしまっているし・・・
登場人物たちの性格がどうも気が短く浅慮で、突発的・衝動的に行動する人ばかり。特に主人公のフリンと兄バートンは何かとぷんすか怒りまくっていて、もっと理性的に話し合えば様々なことが効率的かつ効果的に進むのに、お互いに衝動に任せて行動して阿呆な目に会う、の繰り返しなのがちょっと鼻につく。
「なんでお兄ちゃんはいつもそうなの!?」「そんなことはない俺はいつも話をよく聞いている」「嘘!お兄ちゃんはいつもそう!」「ちょっと待ってくれフリン俺の話を聞いてくれ」「もういい!私は〇〇する!」「おい待てフリン!クソッ」的な会話(実際にはこんな会話はないがイメージ的に)を何十回と繰り返しているイメージ。
他の登場人物も、突発的に人を殺しがちで、熟慮している風に見えないのが行き当たりばったりに見えてしまうことが何回かあった。
全員理性的な登場人物だと最短距離で結論にたどり着いてしまって話が膨らまずつまらなくなるのかもしれないので、テンポの良いストーリー展開とトレードオフなのかもしれない。その点では成功しているのかな。
当然のことながら続編がある前提で話は終わっており、未来から過去への一方的な介入に対してフリンたちが敢然と立ち向かおうとするその瞬間でシーズン1が終わったため、次シーズンでより一層暴れまわってくれることを期待したい。

ワンダーウーマン 1984(2020)

予備知識なしにアマプラで見てしまったが、全部観た後にこれが第二作目だということを知った・・・やっぱりこういうのはフラッと観ちゃうと損することが多いな~。

1984アメリカ。主人公:ワンダーウーマンことダイアナ・プリンスは、その知性を生かしてスミソニアン博物館で働きながら、ワンダーウーマンとして世の悪と戦っていた。
職場の同僚として出会った、ナードっぽい地味な女性・バーバラは、FBIから盗品の鑑定を依頼されたが、その中に奇妙な石があり、「なんでも一つだけ願いをかなえる」と台座に書いてあった。ダイアナとバーバラが試しに願い事を言うと、本当に叶ってしまった。
一方、事業家のマックスが博物館への援助者としてバーバラの前に現れるが、彼はバーバラが持っていた石を探しており、こっそり持ち去ってしまう。
そして石の力を利用し、自分の願いが何度でもすべて叶うように仕向け、やがて世界中を巻き込み支配しようとたくらむ。
ダイアナはマックスと対決しようとするが、マックスの力で超人化し、彼を守ろうとするバーバラが目の前に立ちはだかる・・・

「一つだけ願いを叶える」を転用して「何度も叶うようにする」ロジックは昔から考察されてきた鉄板ネタだが、自分を石化することでそれを可能とするというのは、うまいことやったようなやってないような、ひとねじりしたようなしてないような。触ったものがすべて金になるミダス王の故事を思い出すが、そのような寓話的な話にはならず、圧倒的な力を使いすぎて弱体化していくというところはもうひと捻りほしかったなぁ。
前半部分のスタイリッシュな美女ダイアナとイケてないバーバラの描き方がかなり露骨で、バーバラが気の毒になるのだが、だんだんあか抜けて美しくなる過程を見せるための落差であることも最初から分かっているので、どうなっていくのかワクワクする。
しかしただ美女になるだけではなく、同じパワーを得て激闘を繰り広げるとは思ってなかったので、嬉しい裏切りであった。

古典になっているアメリカのテレビドラマ版は見たことがないので昔の状況はわからないが、ストーリーは単調気味で男はバカでも美しく強い女性たちが盛り上げてくれて楽しく仕上がっているのは変わらずなのだろうか。
やはりバックボーンを知っている前提で楽しむ映画なのだろう。第一作も観なくては。

 

テネット(2020)

何の気なしにアマプラで見始めたのだが、今まで観た中で一番難解というか、知恵が必要な映画だった・・・

ウクライナ・キーウの劇場でテロ事件が発生。主人公はウクライナ警察に偽装した形で潜入したCIAのエージェントで、重要人物の救出と重要品の奪取を任務としていた。以降、主人公の名前が出てくることは一切なく、クレジットも「名もなき男」としか出てこない。
作戦は失敗し、男はロシア側にとらえられて拷問を受け、歯に仕込んであった自決用の毒薬を飲み、意識が途絶える。
しかし、男は見知らぬ船の中で再び意識を取り戻す。そこには一人の男がいて、「あれは君を試すための作戦だった」と明かし、第三次世界大戦を回避するための組織「テネット」へスカウトされる。
指示に従いとある研究所へ行くと、そこでは「逆行する弾丸」を見せられる。時間を逆に進む弾丸は、撃つ前に存在した弾痕が銃口の中へ戻っていくのだった。男はこれと同じ現象をキーウの劇場で見たことを思い出す。それは、時間逆行装置「アルゴリズム」によるものであった。彼がキーウでプルトニウムと教えられて確保しようとしたそれがまさにアルゴリズムの一つであり、9つに分けられ未来から過去に送られた残りのアルゴリズムの存在を知ることになった。
男は弾丸製造の線を追うためムンバイへ飛び、テネットの協力者ニールと会って武器商人と接触するが、武器商人の男ではなくその妻の方が黒幕であった。
男は武器商人の妻から、ロシア人の武器商人セイターが関与していることを知らされ、その妻であるキャットと接触する。キャットはかつて美術品の贋作者アレポと不倫しており、セイターは脅迫のネタに使えるとその贋作品を落札し保管していた。
キャットの支持を得るため、セイターから贋作品を盗み出そうとする男はニールと共に、目的のものが保管されているオスロの美術品倉庫「フリーポート」へ潜入するが、そこであからさまに怪しい動き方をする謎の二人組と交戦する。
セイターは未来人と共謀して第三次世界大戦を発生させ、世界を滅ぼそうとしていることを知った男はセイターと接触をはかるがうまくいかず、キャットはセイターに撃たれて重傷を負ってしまう。
キャットを治すため時間を逆行する男たち。その中で、フリーポートで接触した二人組が実は男とニールたち自身であることがわかる。また、セイターとのアルゴリズム争奪戦では逆行状態でカーチェイスを行い死闘を繰り広げる。
セイターが死ぬと生体認証が作動してアルゴリズムが完成し、世界全体の時間逆行が起き、世界が滅ぶことを知った男たち。テネットの実働部隊が、アルゴリズムの一つが隠されているロシアのスタルスク12へ、時間を逆行してアルゴリズムの発動を阻止するべく作戦を開始し、男たちもそれに参加する・・・

…覚書として書いてはみたものの、何を言っているのかわけわからんなぁ、これ。
こんなに何度も何度も映像を観返して、Youtubeにアップされている解説動画を何度も繰り返し見聞きした映画はこれが初めて。
特に時間逆行の概念がわかりづらくて、往年の古いSFになじんだ身からすると却って腹落ちしないところが多い。特になじまなかったのが、「未来は確定しており、どんなに現在であがいても未来を変えることはできない」という点。ほとんどのSFは「未来は変えられる」前提となっており、それはすなわち現在を生きる人々に夢と希望を与えなければならないためだが、理屈を幾重にも重ねた本作のようなストーリーでは不確定未来は邪魔でしかなく、大前提のルールとして定めたということなのだろう。
そして時間の順行と逆行が入り混じるという、寡聞にして初見のシーン。映像は逆回しにすればよいだけかもしれないが、実際にこの中に参加したら脳が理解できずに爆発しそう。
しかし、時間は逆行しているのに重力は一定なの?慣性は?いろいろと疑問はあるが、見せ場としては大迫力で見ごたえ十分。でも理解するのがほんとに大変、というか未だに理解できた気がしない。
あと、クリストファー・ノーランの作品ではおなじみのあの耳障りの悪いノイズ的BGM。効果的なのは認めるがほんと居心地が悪くなるというか不安になるというか、見ている側の不幸せ感を煽るなぁ。正直苦手。
主人公の「名もなき男」が、なんとなく世間知らずというか若すぎるというか、最後までそんな印象がぬぐえなかったのだが、あとからデンゼル・ワシントンの息子だということを知った。お坊ちゃまだったか~。
キャット役のエリザベス・デビッキが非常に美しいのだが、それ故に日本人の主観的頭身とかけ離れすぎていて逆に怖い。こりゃかなわないわ。
終盤のニールのオチやキャットのくだりは、泣かせるが蛇足であるようにも感じる。まあ、こういうのがないとほんとに思考実験なだけで終わっちゃうもんなぁ。

TENET テネット(字幕版)

TENET テネット(字幕版)

  • ジョン・デイビッド・ワシントン
Amazon

 

仮面ライダーギーツ×リバイス movieバトルロワイヤル(2022)

もちろん子供が見る前提のコンテンツであり映画なので、普段は劇場版仮面ライダーは観に行かないのだが、今回ばかりはどうしても観たくて、娘をダシに使い映画館へ足を運んだ。

映画は前半が仮面ライダーバイスのパート。
全ての戦いが終わり、温泉旅行に出かけた五十嵐一家。
赤ん坊がいる。いつのまにか4人目の子供が生まれていた。マジか!
今回はその子が身に宿す悪魔がストーリーの主軸となって話が進んでいく。
そして中盤にギーツパート。メインキャラライダーが協力して、捕らえられたミニ悪魔を輸送出来たらゲームクリアという条件。
輸送したいギーツ側の仮面ライダーと、悪魔を切り離されると弱ってしまう4人目の赤ちゃん兄弟のために奮闘する五十嵐家ライダーたち。それぞれの利害が相反して戦いとなるが・・・

この映画を見に行ったのはギーツでもリバイスでもなく、20周年を迎える「仮面ライダー龍騎」から、仮面ライダー龍騎、ナイト、王蛇、リュウガおよび中の人が出演するから。
もちろん中の人はあれから20年の歳月分、齢を取っており、全員オッサンもいいところなのだが、観ているこちら側のおっさんも号泣モノである。あ~かっちょええ!
Youtubeで映画の番宣として彼ら懐かしのメンバーのトークがいっぱいアップされており、もちろん当時好きだったおっさんを狩り集めるためのおっさんホイホイなのだが、それに見事にはまってしまった。
でも現在の優れた映像技術で龍騎を観られたので、それだけですべて許せる。
しかし変身や必殺技のエフェクトが今のライダーと比べると地味で控えめ。それがまたよいところもあるのだが、今のライダーは今のライダーで大迫力であり、やはり現在まで連綿と続いてきた仮面ライダーの進化はすごいと改めて思った。
テレビて観ていても「このすごい特撮を毎週観られるっておかしいだろ」と思うくらいよくできているが、劇場版になるとそれが2倍くらいすごい。
そしてリバイスもギーツも、メインキャラが一列に並んで一斉に「変身!」というのが胸アツ。劇場版はこういうサービスカットが多いのでありがたい。

俳優さんや制作側の事情もあるとは思うが、また平成第一期のライダーを客演で出してもらえると嬉しいなぁ。

kamenrider-winter.com

シン・ウルトラマン(2022)

言わずと知れた庵野秀明監督作品。アマプラで観た。ネタバレ注意。

なぜか日本にしか現れない未知の生物「禍威獣」(かいじゅう)。通常の戦争兵器は彼らには聞かず、対応に苦慮した日本政府は、それぞれの道の専門家たちを集め、禍特対(カトクタイ)を設立。禍威獣への対策に追われていた。
その中で突如あらわれた銀色の巨人。正体不明の巨人は禍威獣を倒し、飛び去って行った。
新たに禍特対に配属された浅見は、銀色の巨人対策をメインに、禍特対のメンバーである神永とバディを組むことになった。しかし、神永は意味不明な質問を繰り返した後、禍特対メンバーの前から姿を消した。
その頃、外星人であるザラブ星人が日本政府と接触し、日本に限りなく不平等な条約を締結する。そしてニセウルトラマンを用い、ウルトラマンの立場を危うくしようと画策する。
そしてウルトラマンの変身体であることが世の中にバレてしまった神永は姿をくらます。
その後、別の外星人であるメフィラスが登場、浅見を巨大化させ、またしても日本政府と交渉し、ウルトラマンにも手を出すなと警告に来る・・・

正直、ウルトラマンはオンタイムでは見ていないのと、そこまで入れ込んでもいなかったので、本作にまつわる元ネタがあまりわからないまま見た。
ウルトラQへのオマージュや、当時の子供向け雑誌に出ていた嘘情報「ゾーフィ(元はゾフィー)が現れ、ゼットンを地球にけしかける」をそのまま盛り込んだりとか、コアなオタクの抜かりないインサートが随所にみられるようで、それを知っていたら面白さももっと強かったのかもしれない。
しかし、個人的にはとにもかくにも、最初に出てきたウルトラマンがあまりにもリトルグレイっぽすぎてひたすら気持ち悪い。もうほんとにグレイ大嫌いなので、やめてくれ~!と叫びたくなる。
当時、矢追純一のUFOスペシャル的なテレビ番組が人気を博しており、その影響を受けまくってしまい、お化けも幽霊も全く怖くないのに、宇宙人だけは、その中でもグレイ系は本能から恐怖を覚える。UFOに連れていかれてグレイがワラワラと群がってきて、体の中に何かをインプラントされる的なことを想像するだけで気がふれそうな気分である。
もちろんそういうのを敢えて想起させる目的があのデザインにあったのかもしれないが・・・。
その後、人の意思が入り込むことを表すかのように、血管的に赤のデザインが入って従来のウルトラマンらしい見かけになった時はホッとした。
アクションはCGだが、違和感なく作りこまれていて、大変な迫力。
当時は着ぐるみしか選択肢がなかったわけだが、敢えてその懐古趣味に浸らずに妥協しない姿勢が感じられてとてもよかった。

従来はあまり触れられなかったベータカプセルが技術力の象徴としてストーリーに取り上げられていたのも印象的。ちょっと「正解するカド」っぽかったけど。

また、ウルトラマンの意識と、変身体となる人間の意識の交流については、元の方ではかなりあいまいに都合よく描かれていたが、本作では人間・神永の意識はほぼなく、ウルトラマンオンリーで(記憶は神永のものを使えるらしいが)行動している。そのパターンもあるとは思うが、二つの意識が顕在で、相互に協力してほしかった。もちろんその方がダサいのはわかっているけれども。

あと、メフィラスは相当知的で策謀家として描かれているのに、最後いろいろうまくいかないと、結局は巨大化してウルトラマンと肉弾戦になるのね。まあ元作がそうだから仕方がないけど、知性が感じられない解決法だなぁ。もうちょっとスマートに撤退する方法があったと思うが、みんなもちろんアクションが見たくてウルトラマンを観ているので、そこはもう予定調和ということで。

それにしても日本政府は本当にだらしなく描かれている。もちろん実在の政府に対する当てこすりであり、現実の日本外交を皮肉っているわけで、だいたいこんなもんだよなぁという諦めの念が湧いてしまう。
最後は日本もちょっと頑張っていたけど。現実でもそうあってほしいものだ。

 

仮面ライダーBLACK SUN(2022)

AMAZONオリジナルドラマ。全10話。ネタバレ注意。

時は2022年。この世界では半世紀前に怪人-KAIJIN-が誕生し、人間と共存しつつも、摩擦や軋轢が絶えず、緊張が緩和しきれずにいた。街中では怪人排斥を叫ぶデモが行われ、国連では少女が怪人の差別撤廃を訴えていた。
怪人は通常は人間と変わらない姿をしているが、力を開放したり興奮したりすると怪人の姿に変化し、パワーが増加したり、変身後の怪人の特性によって空が飛べたり、殺傷能力が高くなったりする。
また、怪人には下級怪人や上級怪人、神官クラスなどの階層が存在しており、神官たちは日本政府の中枢に食い込み、人間と怪人、お互いの利益のために相手を利用しているのであった。
一方、街の片隅で生きながらえ、はした金で汚い仕事を請け負っている、うつろな目をした中年男性・南光太郎は、人権活動家・和泉葵を殺そうとしてふと手を止める。彼女の胸に光るペンダントはまぎれもなくキングストーン-創世王を生み出すための2つのキングストーンのうちのひとつであった。
ここに、創世王と二つのキングストーンをめぐる、怪人と人間たちの過去50年の歴史とその終幕が明らかになる・・・

10話あるだけあって話が非常に複雑で入り組んでおり、50年前の学園紛争で60年安保さながらに怪人の人権を訴えたグループ「五流護六(ゴルゴム)」のメンバーたちと、のちの総理となる、当時の総理の孫の堂波真一の因縁と、現代の彼らが織り成す裏切りと戦いが交錯しまくっている。
三神官は当時の総理大臣と手を握る。
ビルケニアはそれを良しとせず幽閉されていたが、のちに現総理大臣:堂波真一の懐刀となる。
信彦-シャドームーン-は50年間幽閉されたあと、のちにゴルゴムを乗っ取り、怪人優位社会を目指す。
光太郎-ブラックサン-は創世王を殺し、これ以上怪人が生み出されない世界を目指す。
それぞれの思いがあまりにも違い過ぎて争い必至。もうちょっと話し合いはできなかったのかと思うが、50年の間に語られなかったアレコレがきっと山ほどあったはずなので、もう戦うことでしか語り合えない状態に陥ってしまったのだろう。

本作は1980年代に放映された「仮面ライダーBLACK」のリメイクとなるが、視聴者層は当時これを観ていたオッサンたちに100%照準を合わせており、レーティングが18+なのでお子様は見られない。
そのため、ストーリーは骨太かつ大人向けな重厚な内容となっているものの、固有名詞やストーリーの一部などは旧作をこれでもかと言わんばかりになぞっていて、旧作好きにはたまらない内容になっている。
というより作り手側の旧作への愛が深すぎて眩暈がしそうなほど。
その集大成が第10話のオープニングであろう。旧作のOPと同じ画質とカット、主題歌はまさかの倉田てつを版をそのまま使用という大胆さ。ここで涙ぐまなかったオッサンは皆無と思われる。

そして個人的にはビルケニア。旧作ではあまりにも狂暴なので強制睡眠させられていたのを、神官たちが仮面ライダーBLACKになかなか勝てず呼び覚ましたものの、やはりなかなかいうことを聞かずに勝手なことをしでかしながらも「剣聖」の名に恥じない名勝負を繰り広げたのだが、なぜか顔だけおっさんのままでしかも白塗りという、当時としてもちょっと「プッ」と笑ってしまうような造形だった。
本作ではさすがに白塗りはまずいと思ったようだが、それでも三浦貴大の顔が着ぐるみから覗いているので他の怪人との差がありすぎて二度見してしまう。
それでも、本作のビルケニアは、普段からサタンソードを携え、敵をばっさばっさと切り捨てまくったり、●(自主的に伏字)を怪人化してしまうなど、苛烈で容赦がなく残酷だが、一本筋が通っていてとても印象的。三浦貴大の演技がハマっていてかっこよかった。
また、そこまではとても覚えていなかったのだが、クジラ怪人=濱田岳がブラックサンを助けるエピソード。だいぶ旧作に忠実にしたおかげで、瀕死のブラックサンをなぜか海中引き回しの刑に処したり、雑菌まみれっぽい貝汁をダバダバかけまわしたりするのはどうかと思ったが、これもオマージュの一環ということで。
対照的に本作オリジナル設定で、ストーリーの根幹に絡む重要な役として、人権活動家の少女・和泉葵が登場する。
彼女のおかげで過去と現在に一本くさびが入り、ストーリーが分断されずにつながっていくのはよくできていると思った。
そして彼女の怪人形態がとにかく強い。これならライダー形態も作ってあげればいいのになぁと思ったが、そうするとブラックサンとシャドームーンの戦いに水を差すことになるので致し方なしか。
三神官は旧作ではあまり細かく人格描写されてこなかったのだが、本作はそこもしっかりフォローされている。特にビシュム=吉田羊はいい味を出していた。

これまでシャドームーンは仮面ライダー扱いはされてこなかった(敵の怪人の親玉的な扱い)が、本作で晴れてライダーとして括られることになった。まあ、旧作からの共通設定として、ブラックサンとシャドームーンはついとなる創世王候補であり、殺し合い生き残った方が次期創世王になるわけだから、片方がライダーであればもう片方もライダーでないと収まりが悪い。
予告編で観た時は、なんでブラックサンがおっさん(西島秀俊)なのにシャドームーンは若い(中村倫也)んだよと思ったが、そこはしっかりと理屈と説明があって、まあそれなら仕方がないかと。でも、戦って互角なのはなぁ。普通は若い方が強いよな。
しかしブラックサンとシャドームーンのライダー形態、そしてそれぞれのライダーベルトが失神しそうなほどカッコいい。おっさんを狙い撃つとこんなにあざといほどに刺さりまくるカッコよさになるのかと、改めてプロのお仕事のすごさに平伏する。
まあでも、大人向けCSMのベルトが4万4千円。ちょっと手が出ないが・・・ああでもどうしよう。

ラストは賛否あると思うし、正直もう少し丸く収めてほしかったと思わなくもないのだが、あの世界観ではそう簡単に平和は訪れないわけで、その中でも「自由は自分の手で勝ち取る」という光を見せたかったという意味と受け取った。
久々に感動した大作であった。