ザ・ファブル(2014 南勝久)

岡田准一・主演で実写映画化もされたコミック。

裏社会でその名をとどろかせた伝説の殺し屋、ファブル。彼は組織のボスに幼いころから殺しの技術を叩きこまれてきた、生粋の暗殺者であった。
しかし、彼が活躍しすぎたことでその正体が暴かれるのを恐れたボスは、ファブルおよびそのパートナーのヨウコに対し、「1年間大阪で一般人として暮らせ。その間殺しは一切禁止する」と申し渡した。

仮の名前「佐藤 明(アキラ)」「佐藤 洋子」の名を与えられ、組織となじみのあるヤクザ・真黒(まぐろ)組の庇護の元、二人で兄妹として暮らし始める。

アキラはインコを、ヨウコはハムスターを飼い始め、アキラは地元で就職もして、一般人として生活をし始めるが、お世話になった同僚のミサキが真黒組がらみの抗争に巻き込まれた時、それを助けるために立ち上がるのであった・・・

アキラはボスから殺しのテクニックだけでなく、サバイバル技術も叩き込まれており、普段からそれを実践しているので、真黒組から一般的な家を与えられても、それをどう使っていいのか持て余しているところがあり、その辺が妙にリアリティがありつつもユーモラスで、クスッと笑ってしまう。
例えば家の中では水を抜いて空にした風呂の中で素っ裸で寝ているし、ミサキと居酒屋に行ってもサンマの食べ方がよくわからず、頭から丸かじりしたりしている。
本人はものすごく真面目に一般人を実践しているのだが、真面目であればあるほどおかしい。
また、街の小さなデザイン会社で働くアキラが一所懸命書くイラストがヘタウマ系で笑いを誘う。
ヨウコはまだアキラに比べれば一般人的なふるまいをするのには長けているのだが、尋常ならざる戦闘力の持ち主であり、また大変な酒豪でもあるので、見た目の美人さ加減で近寄ってくるナンパ男を飲み勝負で撃沈させるのを何よりも楽しみにしている。

ただ、ストーリーはあくまでもハードで、真黒組の跡目問題に端を発する抗争では非常にあっけなく人の命が奪われていく。
アキラがボスの命令を遵守しようとしていても、周りではバンバン人が殺されており、アキラも人を殺さなければならない状況に追い込まれていくが、それを彼がどう判断して乗り切るか、というのが話の見どころの一つとなっている。
特に後半、同じ殺し屋組織の人間が絡んでくるとハードさが一層増し、警察の手の届かない裏社会でしか通用しない厳しいルールの下で各人が暗躍し、もがく姿が描かれており、日常的なのほほんとした生活をアキラが生真面目に守り抜こうとする姿と対比されていて興味深い。
ただ、アキラはこれらの人々の中でも群を抜いて格闘や殺しのスキルが高いため、ほぼほぼ勝負にならない。この手の作品では、たいてい拮抗する実力を持ったライバルが現れ、ぎりぎりの戦いをどう制するのかが見せ場となることが多いが、本作の主要テーマは戦闘そのものでは全くなく、アキラがどう生きていくかに主軸が置かれているが故の設定であろう。

ヒロイン的な立ち位置にあるミサキちゃんがかなりかわいく描かれており、定石通りのちにアキラに惚れるのだが、あまりアキラからデレることはなく、でも「守ってあげたい」的なことを言っているのがちょっともどかしい。
恋愛まで一般人と同じようにするところまではこの作品の中では描き切れなかったようで、そこが物足りない気がする。
ただ、先般始まったセカンドシーズンではがっつりやってくれそうなので期待している。