観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

ANIARA アニアーラ(2019)

アマプラのおすすめにひょこっと出てきたので、何の気なしに観始めたのだが、半分くらいを観終わる頃に「あれ?これはちょっと簡単な作品ではないぞ」と感じ出し、評価が星2個台と相当辛い点数がついていることにやっと気がついた。ひょえ~。でも頑張って観た。

原作はスウェーデンの小説家・詩人であるノーベル賞作家ハリー・マーティンソンが1956年に出版した詩。オペラ化もされ、おそらく地元では満を持しての映画化だったと思われる。
放射能汚染により住めなくなった地球から火星へ移住するべく、8000人の乗客が巨大箱舟型宇宙船アニアーラ号へ搭乗した。豪華ホテルのような至れり尽くせりの内装やサービスが充実しており、何の不自由もなく3週間で火星に到着し、夢の火星生活が始まるはずだったが、船体に衝突した小さな破片で重大な損傷を引き起こし、燃料棒を破棄せざるを得なくなってしまったことから、この宇宙船は軌道を大きく反れ、琴座方面へ漂流することになる。
地球のイメージを人の心に投影し、心の平安化・沈静化を導き出す人工知能システム「MIMA」の責任者ミーマローベは、パニックに陥りそうになる人々を救おうと積極的にMIMAを使ってもらうが、逆にMIMAが過重負荷に耐えられなくなり、自爆的に故障してしまった。
船長の独断で、最初は数年の遅れで火星に行けるとアナウンスされていたが、次第にそれが根拠のない発言であることがバレ、謎の新興宗教が広まったり、自殺者が増えたりして、船内に厭世観が広まっていく・・・

宇宙船の外観はとても壮大で美しくかっこいいのだが、それ以外の船内の様子だとか人々の振る舞いは、単に豪華なホテルに泊まっているお客、くらいの描写。
予算の関係でやむを得なかったのかもしれないが、それが逆にリアリティを増している。
こういう世代型宇宙船は、乗客それぞれが何らかのミッションを持っているイメージを持っていたが、この作品では乗客=お客さんと、それをアテンドする乗組員の立場が完全に固定されていて、この立ち位置で長い年月を過ごすのはちょっと無理だろ、という気もする。事実、後年には職種替えも行われている描写があった。
また、船長が相当ポンコツというか場当たり的で、なんでこの船長指揮下でこの船がこんなに長い間運営可能だったのか不思議。壊滅的な状況に陥らなかったことは相当ラッキーだったのでは。
SF小説ではよくあるタイプの滅亡系ストーリーなのだが、映像で改めて見せられるとエグい。人の心の嫌な部分をこれでもかと描写しており、それが原作の真骨頂なのかもしれないが、「アイタタ、もうやめて~!」と言いたくなる執拗さがある。
ラストのオチもあまりひねられておらず、もうちょっと意外性が欲しかったところだが、詩的にはこれが美しいのかもしれない。
主要な登場人物がみんなおっさんおばさんで、それが美しくないという酷評もあるようなのだが、世の中を動かしている構成比としては圧倒的におっさんおばさん世代が大きいわけで、それもまたリアルな感じがして個人的には納得だった。

楽しさや面白さを期待して観ると確かに星2つ以下が妥当なところかと思うが、純粋なSFとしての思考実験や滅びの美を鑑賞するという意味ではよくできていた。
あと、モザイクのかかっていない勃起したオ〇ン〇ンが丸ごと出てくるのだが、これってAmazon的にありなんだな。芸術だから?

 

ANIARA アニアーラ(吹替版)

ANIARA アニアーラ(吹替版)

  • エメリー・ヨンソン
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