ロジャーズ クライエント中心療法(1983)佐治守夫・飯長喜一郎

 一時カウンセリングの勉強をしていた時期があり、その時最初に読んだ本。

カール・ロジャーズはアメリカの臨床心理学者。カウンセリングの手法として「クライエント中心療法」という技法を確立した人で有名。
この技法はカウンセリングの基礎と言われており、最終的に別の技法を選択する人も必ず一度は通る道と言われているほど基本中の基本。
本書はそのカール・ロジャーズの経歴と、このクライエント中心療法(日本では来談者中心療法とも言われている)がどんな経緯で確立されたかを説明している本。
それまでのカウンセリングは、カウンセラーが患者の分析を行い、診断を下す(指示的療法)というものであったが、ロジャーズは患者自身が自らのうちに自己実現する力を備えているとして、カウンセラーはあくまでも援助する立場であり、患者ではなくクライエントが自分で心の問題に気付き、気づくことで緩解することを手助けする(非指示的療法)という考え方を提唱した。

カウンセラーの態度として「無条件の肯定的関心」「共感的理解」「自己一致」があげられる。積極的に、クライエントの話に耳を傾け、カウンセラーがクライエントに対して肯定的に関心を持っており、話を聞きたいということを明確にする。
また、クライエントの話を同感(エンパシー)ではなく共感(シンパシー)で理解する。同感とは自己と一体化してしまって自分のこととしてとらえてしまうが、共感はあくまでもクライエントとカウンセラー自身は別のものとしてとらえつつ、クライエントの気持ちがわかることを指す。
そのために「自己一致」が必要となるが、これはカウンセラー自身が自分自身を肯定しているかどうかであり、自己一致していないカウンセラーは、クライエントの害になるばかりか、カウンセラー自身が傷ついてしまう危険をはらむからである。
これらは「療法」として語られているが、一般社会を生きる上でのコミュニケーションの方法としても十分通用する態度であり考え方であると思っている。
会社の研修などでもさらっと触れる程度で「傾聴が大事」的なことを言っていたりするが、実際はもっと理解が必要な奥深い概念であることがわかる。
ただ、決して難しいことではなく、聴く側の人としての態度を問うているわけだ。
自己一致のくだりは、よく「自分は自罰的だからいつまでたっても自己一致できそうにない」という理解をしてしまう人が多いのだが、それはちょっと違う。自罰的でもいい。そんな自分を認めて、そうなってしまう自分にOKを出すのが自己一致である。
普段、失敗ばかりして自分にがっかりすることも多い人生ではあるが、この考え方が根底にあれば、そうひどく落ち込むこともないのではないか、と思える。
30代の頃にこの考え方に出会ったおかげでだいぶ救われた。あざっす!

ロジャーズ クライエント中心療法 新版 --カウンセリングの核心を学ぶ

ロジャーズ クライエント中心療法 新版 --カウンセリングの核心を学ぶ

  • 発売日: 2011/05/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)