狼の怨歌(1972 平井和正)

 「狼の紋章」に続く、ウルフガイシリーズ第二弾。

前作で羽黒獰と死闘を繰り広げた狼人間・犬神明(いぬがみあきら)。彼はとある病院に収容されていた。
その病院の院長は彼の持つ狼人間の特異性に気づいており、様々な人体実験を行い、その不死身性を検証していく。
一方、もう一人の狼人間であり、ルポライターの神明(じんあきら)は、仲間を助けようと犬神明の動静を探っていたが、そこで一人の超人的な強さを持つ少女に出会う。
彼女は中国の諜報員であり、コードネーム:虎4(フースー)と呼ばれる、世界中の諜報機関が恐れる「虎部隊」の一員であった。彼女もまた、犬神明に関心を寄せていた。
さらに、犬神明を非人道的な実験にさらし続ける院長は、彼の血液を看護婦に輸血することで、大変な怪物を作り出してしまう。
犬神明の身柄を確保するため、各国の諜報員が病院を取り巻いていたが、看護婦の変化した狼の化け物にことごとく引き裂かれてしまうのだった。
そんな中、CIAのエージェントである西城恵(さいじょうけい)は、生き残った医師に、犬神明の血液から作った血清を打つよう強制する。これがあれば強くなれる・・・
神明の手により脱出した犬神明は、虎4と死闘を繰り広げるが、実は彼女も、そしてその上司であり虎部隊の体調である林石隆も、超人的な身体能力及び虎へのメタモルフォーゼを行う虎人間であった。
彼らは同じ境遇の犬神明と神明が、米CIAの手に落ちることを避けるべく、彼らの保護を申し出る。
さらわれた青鹿晶子を救出するため、甘んじてそれを受ける犬神明と神明・・・

・・・だいぶ話が込み入っているが、それも無理のない話で、前作の「狼の紋章」では、特異な人間は主人公の犬神明だけだったのが、同じ狼人間の神明、虎人間の虎4と林隊長、CIAの西城恵と、際立ったキャラクターたちが一斉に登場するため、どうしてもそれぞれのエピソードが濃くなってしまう。
今後これらの人たちが中心となってストーリーを繰り広げていくので、どうしても顔見世興行的な意味合いが強い本作だが、やっとここで本来のウルフガイシリーズの面白さの片鱗が見られるというわけだ。

この主人公が中学生であるところのウルフガイシリーズは別名少年ウルフと言われているが、それはもう一つ、犬神明が主人公のシリーズがあるからで、そちらはアダルトウルフガイシリーズと呼ばれている。
というのも、そちらの犬神明はいい大人で、ルポライターをやっていて、始終女性に鼻の下を伸ばしつつも、トラブルに巻き込まれていき、陽気にそれを解決する、ジャン・ポール・ベルモント似の青年という、ストイックで線の細い少年犬神明とはまるで違うキャラだからである。
今どきの言葉で言うと世界線が違う、当時の言葉ではパラレルワールドということであるらしい。
このアダルトな犬神明が、本作の神明とほぼイコールであると思っておけばよい。
ともかく、本作で役者はほぼ揃い、犬神明も作品中で初めて狼にメタモルフォーゼした。本編にようやく足を踏み入れた、記念すべき作品である。

狼の怨歌 ウルフガイ

狼の怨歌 ウルフガイ